バウンティ (帆船)

HMSバウンティ号：反乱の歴史とその後

HMSバウンティは、18世紀のイギリス海軍の武装輸送船で、バウンティ号の反乱という歴史的な事件で広く知られています。元々は石炭運搬船として建造されたこの船は、タヒチからパンノキを西インド諸島へ輸送する任務を担い、その過程で乗組員の反乱という悲劇に見舞われました。

バウンティ号の概要

1784年、バウンティは「ベシア」という名の石炭運搬船として、イギリスのヨークシャー州で建造されました。1787年、イギリス海軍はこの船を1,950ポンドで購入し、「バウンティ」と改名しました。排水量215トンという小型船ながら、3本マストを持つ全装帆船であり、パンノキ採取のために改装され、4門の4ポンド砲と10門の旋回砲が装備されました。

バウンティは「HMSバウンティ」とも「HMAVバウンティ」とも呼ばれますが、これらの呼称が一般的に使用されるようになったのは、実際には後年のことです。「HMS」は「国王（女王）陛下の船」の省略形であり、1790年代以降に普及し、さらに「HMS」という頭文字のみの形になったのは20世紀に入ってからです。

パンノキ輸送の遠征

バウンティがイギリス海軍に購入された目的は、タヒチ島のパンノキを西インド諸島に輸送する実験航海のためでした。パンノキが西インド諸島で栽培に成功すれば、現地の奴隷や入植者の食糧源になると期待されていました。

この計画を提案した植物学者ジョゼフ・バンクスは、ウィリアム・ブライ海尉を遠征隊の指揮官に推薦しました。1787年6月、バウンティは航海に向けて改装され、パンノキの苗木を収容するために船長室が改造され、上甲板には採光用の格子窓が取り付けられました。8月16日、33歳のブライが正式に船の指揮官に任命され、乗組員は彼を含めて46名でした。

1787年12月23日、バウンティはタヒチに向けて出航しました。ホーン岬周辺の悪天候に阻まれ、東への転進を余儀なくされましたが、1788年10月26日にはタヒチに到着しました。一行は5か月間タヒチに滞在し、西インド諸島に運ぶ1,015株のパンノキを採集し、鉢植えにしました。この間、乗組員はタヒチの文化に親しみ、現地の女性と関係を持つ者も多くいました。

バウンティ号の反乱

1789年4月4日、バウンティはパンノキを積み込みタヒチを出航しましたが、その24日後の4月28日、フレッチャー・クリスチャンを首謀者とする反乱が発生しました。ブライと彼に従う船員たちはカッターボートに乗せられ追放され、反乱者たちはトゥブアイ島への定住を試みましたが、先住民との抗争により失敗し、タヒチに戻りました。その後、一部の反乱者はイギリス海軍の追跡を逃れるため、ピトケアン島へ向かいました。

ピトケアン島での終焉

1790年1月15日、クリスチャンたちはピトケアン島に辿り着き、定住を決意しました。バウンティは発見を防ぐために焼却され、その残骸はバウンティ湾に沈んでいます。

その後

タヒチに残った反乱者たちはイギリス軍艦パンドラによって捕縛され、ピトケアン島に逃れた反乱者たちは1808年にアメリカの捕鯨船によって発見されました。1825年には、イギリスのスループ「ブロッサム」がピトケアン島に停泊し、アダムズから反乱の詳細を聞き取っています。

1957年、アメリカの水中写真家ルイス・マーデンがバウンティの残骸を発見し、錨などの遺物を引き上げました。現在もバウンティ湾には、バラスト石などの残骸が残っています。

レプリカ船の建造と沈没

1935年と1962年には、バウンティ号の反乱を題材とした映画が制作され、そのためにレプリカ船が建造されました。1960年に建造されたレプリカ船は、長年にわたり世界各地で展示航海を行っていましたが、2012年10月29日、ハリケーン・サンディに遭遇し沈没。船長を含む2名が行方不明となり、悲劇的な結末を迎えました。

また、もう一隻のレプリカは1979年に建造され、観光クルーズ船として使用された後、香港の企業に売却されました。

バウンティ号の物語は、反乱、冒険、そして人間の葛藤を描いた歴史的な出来事として、今もなお語り継がれています。

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