ウラジーミル1世

ウラジーミル1世：キエフ大公国の聖なる支配者

ウラジーミル1世（955年頃 - 1015年7月15日）は、リューリク朝のキエフ大公であり、キエフ大公国をキリスト教化したことで知られています。正教会をはじめとする各教会で聖人として崇敬され、「亜使徒・聖公ウラジーミル」とも呼ばれます。

生涯

前半生

955年頃、ウラジーミルはキエフ大公スヴャトスラフ1世の子として誕生しました。母はオリガに仕えたマルーシャ。兄にはヤロポルク1世とオレーグがいました。

父の存命中からノヴゴロド公に任じられ、後継者として期待されていました。975年にヤロポルクがオレーグを殺害すると、977年にウラジーミルはスカンディナビアへ逃亡。978年、ヴァリャーグ人を率いて帰還し、ヤロポルクを破ってキエフ大公に即位しました。

キエフ進撃の途上では、ポロツク公国を滅ぼし、公ログヴォロドとその息子たちを殺害。公女ログネダを略奪して妻としました。また、南方や北東地域への進出によって、キエフ大公国の領土を拡大しました。981年にはヴャチチ族、984年にはラヂミチ族を従属させています。ウラジーミルの町やヴォルィニ地方のウラジーミルは彼が建設したとされています。

内政面では、ルーシ族の植民を奨励する一方で、伝統的な異教信仰を基盤とした国制改革を試みましたが、失敗に終わりました。その後、キリスト教に関心を抱き、987年に家臣を各地に派遣して宗教調査を行わせました。

キリスト教導入後

988年、ウラジーミルはキリスト教を国教として導入し、自らも洗礼を受けました。東ローマ皇帝バシレイオス2世の妹アンナと結婚し、キエフ大公国の権威を高めるとともに、ビザンツ文化を取り入れました。異教の偶像を破壊するよう命じ、キエフ大公国各地に息子たちを配置して勢力を安定させました。

周辺諸国との関係はおおむね良好でしたが、南方からのペチェネグ人の侵入には悩まされました。アンナの死後、オットー1世の孫娘と再婚したという説もあります。晩年には、ノヴゴロド公であった息子ヤロスラフ1世が貢納を停止したため対立し、討伐の準備中に死去しました（1015年）。

ウラジーミルの遺体は分割され、各地の教会に聖遺物として祀られました。キエフの聖ヴォロディームィル大聖堂は彼に捧げられた聖堂の一つです。彼への崇敬はルーシの伝統となり、19世紀にはキエフ大学にウラジーミルの名が冠されました。ロシア帝国では聖ウラジーミル勲章が設けられています。ウラジーミルは正教会で列聖され、カトリック教会でも聖人として崇敬されています。

業績と影響

政治・軍事両面で大きな成果を収めたウラジーミル1世の功績は、民族叙事詩「ブィリーナ」や修道士ヤコフ・ムニフの『頌詞』で称えられています。彼の時代は、東スラブにおけるヴァリャーグ人時代からキリスト教時代への転換点となりました。

日本語表記

ウラジーミル1世の日本語表記は、研究者や文献によって異なり、ウラヂミル、ウラジーミル1世、聖公ウラジーミル1世、ウラジーミル大公、ウラディミル1世、ヴラジーミル（ヴォロディーミル）、ヴォロディーミル（ロシア語名ウラジーミル）など、多様な表記が見られます。

登場作品

文芸作品
イリヤー・ムーロメツ：ロシアの英雄叙事詩。太陽公ウラジーミルとして登場。
映画
VIKING バイキング 誇り高き戦士たち（2016年、ロシア、演：ダニーラ・コズロフスキー）

ウラジーミル1世は、キエフ大公国の基礎を築き、文化的な発展に貢献した偉大な支配者として、今もなお敬愛されています。

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