バスタニー・ソンナティー

バスタニー・ソンナティー

イランの豊かな食文化の中で、特に親しまれている伝統的な冷たいデザートに「バスタニー・ソンナティー」があります。この名前は、ペルシア語で「アイスクリーム」を意味する「バスタニー」と、「伝統的な」を意味する「ソンナティー」が組み合わさったもので、文字通り「伝統的なアイスクリーム」という意味を持っています。サフランが用いられていることから、「バスタニー・ソンナティー・ザアフェラニ」とも呼ばれることがあります。

特徴と材料

バスタニー・ソンナティーの魅力は、その独特の風味と食感にあります。主な材料として、高貴な香りと鮮やかな黄色をもたらすサフラン、香ばしいピスタチオ、そして華やかな香りのローズウォーターが使われます。これらの素材が織りなす味わいは、一般的なアイスクリームとは一線を画す、エキゾチックで洗練されたものです。

独特の食感の秘密

このアイスクリームの最大の特徴の一つに、口の中で感じられるしゃりしゃりとした食感があります。これは、製造過程で板状に凍らせた生クリームを細かく割って混ぜ込むことによって生まれます。現代の牛乳は、脂肪分が均一になるように加工（ホモナイズ）されていますが、かつては生乳の脂肪球の大きさがまちまちで、アイスクリームを作ると凍った脂肪の塊ができていました。この偶然できた塊が、独特の食感を生み出していたのです。現在のバスタニー・ソンナティーの製法は、ホモナイズされた牛乳では失われてしまった、この昔ながらの食感を意図的に再現するための工夫なのです。

楽しみ方

バスタニー・ソンナティーは、そのままはもちろんのこと、薄く焼き上げたワッフル状の生地にはさんで食べられることもあります。この生地は、日本の伝統的なお菓子である最中の皮にも例えられるような、繊細で味の少ないものです。アイスクリームの濃厚な風味を引き立てる、シンプルながらも効果的な組み合わせと言えるでしょう。イラン国内では、街角の屋台やカフェなど、様々な場所で気軽に楽しむことができます。

長い歴史

バスタニー・ソンナティーの起源は、驚くほど古く、紀元前500年代、古代ペルシアのアケメネス朝時代にまでさかのぼると言われています。当時、人々は雪に様々なシロップをかけて冷たいデザートとして楽しんでおり、これは「シャルバット」と呼ばれていました。このシャルバットが、今日のシャーベットやソルベの原型となったと考えられています。また、紀元前400年代には、バラ水やデンプンで作られる冷菓「ファールーデ」も誕生しており、イランには古くから冷たいデザートの文化が根付いていたことがわかります。

まとめ

バスタニー・ソンナティーは、単なる冷菓ではなく、サフランやローズウォーターが織りなす独特の風味、凍らせた生クリームが生み出す個性的な食感、そして数千年の歴史を持つイランのデザート文化を体現する存在です。イランを訪れた際には、ぜひこの伝統的なアイスクリームを味わい、その深い魅力を体験してみてください。

もう一度検索