バックマン (鉄道模型)

バックマン：世界を駆け抜ける鉄道模型の軌跡

バックマン・インダストリーズ（Bachmann Industries）は、バミューダ諸島に登録された香港資本を持つグローバルな鉄道模型メーカーです。1833年の創業以来、装飾品製造から出発し、数々の買収と革新を経て、世界最大手の鉄道模型メーカーへと成長を遂げました。その歴史と製品、そして世界戦略について詳しく見ていきましょう。

1. 創業から模型メーカーへの変遷

1833年、ヘンリー・カーライルによって創業した当初のバックマンは、アメリカ南部ルイジアナ州の貴族階級をターゲットとした、象牙やべっこう細工の装飾品メーカーでした。南北戦争後も装身具や杖のハンドルなどを製造していましたが、1899年、ヘンリー・G・バックマンとその息子たちによる競合企業との合併を経て「バックマン兄弟商会」へと生まれ変わります。

20世紀に入ると、セルロイド製品の製造を開始し、眼鏡フレームや、後に世界的に人気を博したサングラス「Solarex」を開発。第二次世界大戦中には軍への供給も行うなど、プラスチック製品の分野で大きな成功を収めました。さらに、模型メーカーへの展開を見据え、鳥の模型など、多様な製品を手がけていました。

1960年代後半、アメリカでNゲージの人気が高まると、バックマンは1968年にNゲージ市場に参入。その後、HOゲージにも進出し、アメリカ大手車両メーカーとの提携により、最新鋭の列車模型を独占的に製造するなど、鉄道模型分野での地位を確立していきました。日本のトミー（現タカラトミー）との提携による「トミーナインスケール」シリーズも、その成功の重要な一環でした。

2. 世界規模への成長戦略

1981年、鉄道模型事業の利益低下を背景に、香港のケーダー社に買収され、「バックマン・インダストリー」と改称。その後、製品の改良、中国での生産開始、そしてヨーロッパにおける買収戦略を通じて、グローバルな鉄道模型メーカーへと成長を遂げました。オーストリアのリリプット、イギリスのグラハム・ファリッシュといった老舗メーカーを買収し、ヨーロッパ市場への進出を強化しました。

中国市場にも積極的に進出し、上海に小売店を開設するなど、世界規模での販売網を構築。現在ではアメリカ、ヨーロッパ、中国など世界中で鉄道模型を販売しており、圧倒的なシェアを誇ります。

3. 多彩な製品とブランド

バックマンは、Nゲージ、HOゲージ、Gゲージなど、様々なスケールとゲージの鉄道模型を製造しています。アメリカ型、ヨーロッパ型、中国型など、多様な車両やアクセサリーを幅広く提供しており、初心者向けの安価な入門セットから、上級者向けの精密なモデルまで、多様なニーズに対応しています。

「ビッグハウラーシリーズ」、「スペクトラムシリーズ」、「バックマンプラス」など、それぞれ特徴的な製品シリーズを展開し、さらに近年では「きかんしゃトーマス」や「チャギントン」といった人気アニメとのコラボレーション製品も手がけています。デジタルコマンドコントロール（DCC）システムや、独自の無線車両遠隔操作システム「E-Z App」など、技術革新にも積極的に取り組んでいます。

4. 未来への展望

バックマンは、長年にわたる経験と技術力、そしてグローバルなネットワークを活かし、今後も鉄道模型市場をリードしていく存在となるでしょう。新たな技術の導入や、市場のトレンドに合わせた製品開発を通じて、世界中の鉄道模型ファンに、より魅力的な製品を提供し続けることが期待されます。 その歴史は、単なる模型メーカーの歴史ではなく、技術革新とグローバル化の波に乗り、時代と共に進化を続ける企業の物語でもあります。

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