バッコスの信女

バッコスの信女

『バッコスの信女』（バッカイ、羅: Bacchae）は、古代ギリシアの劇作家エウリピデスによるギリシア悲劇です。ディオニューソス（バッコス）信仰をテーマとし、狂気、信仰、権力、そして人間の本性を深く掘り下げた作品として知られています。

あらすじ

物語は、ディオニューソスが自身の出生を否定するテーバイに復讐するため、信女たちを率いて現れるところから始まります。彼はテーバイの女性たちを狂気に陥れ、キタイローン山中で乱痴気騒ぎを繰り広げさせます。

テーバイの王ペンテウスは、ディオニューソスの祭儀を禁じ、彼を捕らえようとします。しかし、ディオニューソスはペンテウスを操り、信女の格好をさせて山へと誘い込みます。そこで、ペンテウスは自身の母親アガウエーをはじめとする狂乱の信女たちによって、獣と間違われ、八つ裂きにされてしまうのです。

アガウエーは、正気に戻った後、自らが息子を殺害したことを知り、深い悲しみに暮れます。物語の最後は、アガウエーとその姉妹たちがテーバイから追放され、カドモスとその妻ハルモニアーが蛇に変身するという、悲劇的な結末を迎えます。

登場人物

ペンテウス: テーバイの王。ディオニューソスの従兄弟にあたる。
ディオニューソス: ゼウスとセメレーの子。ワイン、酩酊、豊穣の神。
カドモス: テーバイの創建者。ペンテウスの祖父で、アガウエーの父。
テイレシアース: テーバイの盲目の預言者。
アガウエー: ペンテウスの母。ディオニューソスによって狂気に陥れられる。
信女たち: ディオニューソスに付き従う女性たち。狂乱の中でバッコスを信仰する。

作品のテーマ

狂気と理性: 本作は、狂気が人間をどのように支配し、理性を失わせるのかを描いています。ディオニューソスの力によって狂気に陥った人々は、文明的な生活を放棄し、獣のような行動をとるようになります。
信仰と不信仰: ディオニューソスを信じる者と信じない者の対立は、信仰の重要性と危険性を示唆しています。ペンテウスは、ディオニューソスを拒否したために悲劇的な死を迎えます。
権力と支配: ペンテウスは、王としての権力を行使してディオニューソスを抑圧しようとしますが、逆にディオニューソスの力に屈服させられます。権力の濫用は、破滅を招くという教訓が込められています。
人間の本性: 本作は、人間の内に潜む狂気や暴力性を浮き彫りにしています。狂気に身を任せた人間は、時に残酷な行為に及んでしまうのです。

日本語訳

多くの翻訳家によって日本語訳が出版されています。

松平千秋訳
逸身喜一郎訳
丹下和彦訳
村松正俊訳
内山敬二郎訳

関連項目

ギリシア悲劇
ディオニューソス
エウリピデス

『バッコスの信女』は、古代ギリシア悲劇の中でも特に衝撃的な作品として、今日でも多くの人々に読まれ、研究されています。狂気と信仰、そして人間の本性について深く考えさせられる、必読の古典です。

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