バディヌリー

バディヌリー（badinerie）は、バロック音楽における器楽曲の一種であり、舞曲風の短い楽曲を指す言葉として用いられます。日本では英語読みの「バディネリー」という呼称が一般的です。フランス語の動詞「badiner」（冗談を言う、ふざける）に由来する女性名詞で、男性名詞の「badinage」が用いられることもあります。

バディヌリー、またはバディナージュは、18世紀に入ってからフランスやドイツの作曲家によって組曲の楽章として採用されるようになりました。それ以前の用例は非常に稀です。中でも、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの《管弦楽組曲第2番 ロ短調》BWV1067の終曲が最も有名です。この楽曲は、軽快で流麗な旋律が特徴であり、バディヌリーという名称が示す通り、どこかユーモラスで洒脱な雰囲気を湛えています。

バッハがこの作品を文字通りの「おふざけ」として作曲したわけではありません。むしろ、組曲全体の締めくくりとして、聴衆を楽しませるための余興（座興としてのアンコール）として意図されたと考えられます。同様の例として、バッハは同じロ短調の鍵盤楽曲である《フランス風序曲》の終曲を「エコー（余響・余韻）」と名付けていますが、この場合もバディヌリーと同様に「余興」としての意味合いが強いと言えるでしょう。

バディヌリーは、その語源が示すように、軽快でユーモラスな性格を持つ楽曲であり、バロック音楽の中でも親しみやすいジャンルの一つです。バッハの作品以外にも、テレマンやヘンデルなど、多くの作曲家がバディヌリーを作曲しており、様々な楽器編成による作品が存在します。これらの作品に触れることで、バロック音楽の豊かな表現力と多様性をより深く理解することができるでしょう。

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