バトケン州

バトケン州は、キルギスの南西部に位置する州で、州都はバトケン市です。地理的には、東をオシ州、南、西、北をタジキスタンに囲まれ、北東部にはウズベキスタンのフェルガナ州が隣接しています。この地域は、肥沃なフェルガナ盆地が広がる北部と、アライ山脈からトルキスタン山地にかけての険しい山々が連なる南部という、二つの異なる地形的特徴を持っています。

概要

2009年の統計によると、バトケン州の人口は約38万人で、そのうち約24%が都市部に、残りの約76%が農村部に居住しています。民族構成はキルギス人が大半を占めるものの、ウズベク人、タジク人、ロシア人、タタール人、トルコ人など、多様な民族が共存しています。また、州内にはタジキスタンやウズベキスタンの飛び地が点在しており、これが複雑な国境問題を抱える要因となっています。

これらの飛び地は、イスラム過激派組織や麻薬密輸グループの活動ルートとしても利用されており、周辺国との衝突が度々発生しています。特に、タジキスタンとの国境紛争は深刻で、2021年には給水施設をめぐる対立から武力衝突が発生し、多数の死傷者を出しました。2022年にも両国軍の間で交戦が起こり、多くの犠牲者が出ています。このような状況から、日本政府は現在、バトケン州への渡航を中止するよう勧告しています。

バトケン州は、1999年にオシ州西部から分離する形で設立されました。これは、タジキスタンを拠点とするウズベキスタン・イスラム運動(IMU)の活動に対する対応策の一つとも言われています。IMUは過去に地質学者や登山家を誘拐し、キルギス兵士を殺害するなど、周辺地域に大きな被害をもたらしました。

社会経済

2008年のデータによると、バトケン州の雇用人口は約15.7万人、非雇用人口は約5,500人でした。輸出額は1,470万ドル、輸入額は5,360万ドルと、輸入が輸出を大幅に上回っています。

人口統計

2009年時点では、バトケン州には4つの市、5つの町、198の村が存在しています。人口は38万人から43万人程度と推定されています。

民族構成

2009年の調査では、キルギス人が人口の約76.5％を占め、ウズベク人が約14.7％、タジク人が約6.9％となっています。

地方行政区画

バトケン州は、さらに3つの地区に分かれています。

市と町

バトケン州には、バトケン、イスファナ、キジルキヤ、スルユクタの4つの市と、チャウヴァイ、ハイダルカン、ソヴェトスキー、カダムジャイ、ヴォストチュニの5つの町があります。

飛び地

バトケン州内には、ソビエト連邦時代に制定された複数の飛び地が存在します。

チョング・カラ: ウズベキスタンの飛び地で、スフ川付近に位置します。
ジャンギ・アイール: ウズベキスタンの飛び地で、バトケンの東に位置します。
カイラガチュ: タジキスタンの飛び地で、バトケン州の北西部に位置します。
シャヒマルダン: ウズベキスタンの飛び地で、バトケンの東に位置し、人口の9割以上がウズベク人です。
スフ: ウズベキスタンの飛び地で、バトケンの東に位置し、面積が最大です。住民の99%がタジク人です。
ヴォルフ: タジキスタンの飛び地で、イスファラの南に位置し、住民の95%がタジク人です。

観光

安全上の理由から、近年までバトケン州への外国人観光は推奨されていませんでした。特に、オシとバトケンを結ぶ道路は、ウズベキスタンの飛び地であるスフを通過するため、複数回の出入国審査が必要となります。しかし、舗装されていない道路を走行可能な車両であれば、これらの飛び地を迂回し、出入国審査を避けながら旅行することも可能です。南部の山岳地帯は壮大な景観を提供しますが、険しい地形のため登山は容易ではありません。主要な山頂としては、標高5,509mのSummitや5,621mのPik Skalistiyなどがあります。

まとめ

バトケン州は、複雑な国境線、飛び地の存在、紛争の多発など、多くの課題を抱える地域です。しかし、その一方で、肥沃な農地や美しい山岳景観など、豊かな自然にも恵まれています。観光には注意が必要ですが、独自の文化や歴史に触れることができる興味深い地域と言えるでしょう。

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