バハラーム4世

バハラーム4世：サーサーン朝ペルシアの知られざる皇帝

バハラーム4世（生年不詳〜399年）は、サーサーン朝ペルシアの第13代皇帝（シャーハンシャー、在位：388年〜399年）です。シャープール3世の息子として生まれ、父の跡を継いで帝位に就きました。彼の治世は、比較的平穏であったとされていますが、その裏には様々な政治的駆け引きや外敵との戦いがありました。

即位前の経歴

バハラーム4世は、即位以前は皇族の一員として、帝国の南東部に位置するキルマーン州を統治していました。彼は「キルマーンシャー」（キルマーン王の意）の称号を名乗り、その名前は、彼が即位後にイラン西部に建設した都市ケルマーンシャーの由来となりました。

歴史家の記録によると、バハラーム4世はシャープール2世の息子であるという説も存在しますが、多くの歴史家はシャープール3世の息子であると見ています。キルマーン州の統治者として、彼はシーラーガン（現在のシールジャーン）を建設した可能性があり、この都市は帝国の滅亡までキルマーン州の首都として機能しました。シーラーガンは、経済的にも農業的にも重要な地域であり、貨幣の鋳造も行っていました。

治世

バハラーム4世の治世は、全体的に見て平穏であったと評価されています。しかし、その間にもいくつかの重要な出来事がありました。

アルメニアへの介入

サーサーン朝の影響下にあった東アルメニア王国では、ホスロー4世が反抗的な態度を取りました。これに対し、バハラーム4世はホスロー4世を廃位し、代わりに彼の弟であるヴラムシャプーを王位に就けました。この措置は、サーサーン朝の勢力圏における安定を維持するためのものでした。

フン族の侵攻

395年には、フン族がティグリス・ユーフラテス川周辺地域に侵攻してきました。しかし、バハラーム4世はこれを撃退し、帝国の領土を守り抜きました。この戦いを通じて、サーサーン朝はイラン地域の防衛をより強化する必要性を認識しました。

都市建設と貨幣鋳造

バハラーム4世は、即位後にイラン西部にケルマーンシャーという新しい都市を建設しました。この都市は、現在のイランのケルマーンシャー州の州都であり、彼の統治を象徴する存在となっています。また、彼は貨幣鋳造所を設立し、貨幣に鋳造地名を刻印することを一般的としました。これにより、貨幣の起源を容易に識別できるようになりました。

人柄と評価

バハラーム4世の人柄については、歴史的な資料によって評価が分かれています。タバリーは彼の統治を「立派な方法で臣民を統治し、その統治は賞賛された」と評価していますが、ハムザ・アル＝イスファハニは「尊大だが、残酷で臣民を無視した統治者」と評しています。このように、彼の人物像は一概には評価できない複雑さを持っています。

暗殺とその後

399年、バハラーム4世は狩猟中に矢に当たり、死亡しました。この事件については、事故説と暗殺説が存在します。現代の歴史家は、貴族が暗躍した暗殺説を支持する傾向にあります。彼の死後、弟のヤズデギルド1世が後を継いで皇帝となりました。

印章と貨幣

バハラーム4世の印章は、キルマーンシャー時代とサーサーン朝皇帝時代のものの2種類が現存しています。これらの印章には、彼の権力と正当性を示す象徴的な図像が描かれています。また、彼の治世下では、新たな貨幣鋳造所が設立され、貨幣には鋳造地名が刻印されるようになりました。

バハラーム4世は、サーサーン朝ペルシアの歴史において、必ずしも著名な皇帝ではありません。しかし、彼の治世は、帝国の安定と発展に貢献した重要な時期であったと言えるでしょう。彼の政策や業績は、その後のサーサーン朝の歴史に大きな影響を与えました。

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