バライラ・ド・インフェルノ射場

バライラ・ド・インフェルノ射場

バライラ・ド・インフェルノ射場（Barreira do Inferno Launch Center, ポルトガル語: Centro de Lançamento da Barreira do Inferno, 略称: CLBI）は、南米ブラジルの宇宙開発を担う中核機関であるブラジル宇宙機関（Agência Espacial Brasileira; AEB）が運営する主要な宇宙開発施設の一つです。ブラジル北東部に位置するリオグランデ・ド・ノルテ州、その州都ナタールの近郊にあるパルナミリンという街に位置しており、大西洋に面した沿岸部に設置されています。この射場は、ブラジルの宇宙開発計画が本格的に始動した初期の段階にあたる1965年に開設されました。

CLBIの設立以来、その主な任務は観測ロケットの打ち上げにあります。観測ロケットは、人工衛星のように長期的に軌道に乗るのではなく、弾道飛行によって短時間で高い高度に到達し、そこで科学観測や技術試験を行うために使用される種類のロケットです。バライラ・ド・インフェルノ射場は、高層大気現象の研究、微小重力環境を利用した科学実験、新しい宇宙技術や搭載機器の性能評価といった多岐にわたる目的のために、数多くの観測ロケットを宇宙空間へと送り出してきました。この射場から打ち上げられる観測ロケットは、ブラジルの科学者や研究者、そして技術者にとって、宇宙環境を利用した研究開発を進める上で不可欠な手段を提供しています。

一方で、バライラ・ド・インフェルノ射場は、人工衛星を地球周回軌道に乗せるための大型ロケットの打ち上げには使用されていません。人工衛星の打ち上げには、より大規模な設備や広大な安全エリアが必要とされることが一般的です。ブラジルには、主に人工衛星打ち上げロケットのために開発・利用されているアルカンタラ射場（Centro de Lançamento de Alcântara; CLA）という別の主要な射場があります。CLBIは、観測ロケット打ち上げという特定の目的に特化することで、その専門性を高め、ブラジルの宇宙開発における独自の役割を果たしています。これは、ブラジルの宇宙インフラストラクチャにおける機能分担の一環とも言えます。

1965年の開設以降、バライラ・ド・インフェルノ射場は長年にわたり稼働を続け、ブラジルの宇宙科学や宇宙技術の発展に貢献してきました。初期の単純な観測ロケットから、より高度な科学観測機器を搭載したロケットまで、様々なタイプの観測ロケットがこの場所から打ち上げられています。射場の設備は時代の変化と共に更新され、観測ロケット打ち上げのニーズに応え続けています。その歴史は、ブラジルが宇宙空間の利用と探査に向けて歩んできた道のり、特に科学的な知見の蓄積と基礎技術の確立における重要な一章を物語っています。

現在も、バライラ・ド・インフェルノ射場はブラジル宇宙機関の管理のもと、観測ロケットの打ち上げ活動を継続しており、国内の大学や研究機関との連携により、宇宙科学研究や技術開発の拠点としての機能を維持しています。人工衛星打ち上げという側面ではアルカンタラ射場が注目されがちですが、CLBIは観測ロケットという異なる分野で、着実にブラジルの宇宙能力向上に貢献し続けているのです。ブラジルの宇宙開発における、このバライラ・ド・インフェルノ射場が持つ専門性と歴史的な意義は、今後も変わらず重要であり続けるでしょう。

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