バルハシ湖

バルハシ湖（ロシア語: Озеро Балхаш、カザフ語: Балқаш）は、中央アジアのカザフスタン東部に広がる巨大な内陸湖です。カスピ海を除けば、中央アジアにおいては最大級の面積を誇る湖として知られています。

概要と規模

バルハシ湖の面積はおよそ16,996平方キロメートルに達します。かつて中央アジアで最大の湖であったアラル海が大幅に縮小・分裂した結果、現在ではバルハシ湖がこの地域で最大の湖となりました。アジア全体で見ると、ロシアのバイカル湖に次いで2番目の大きさを持ち、世界でも14番目に広い湖沼です。その規模にもかかわらず、近年は流入量の減少や水質汚染といった環境問題が深刻な懸念事項となっています。

地理と形状

湖は東西に細長く広がっており、その全長は約605キロメートルにも及びます。最大幅は74キロメートルです。標高は342メートルに位置し、貯水量は122立方キロメートルと推定されています。水深は平均で5.8メートルと比較的に浅いですが、最も深い場所では25.6メートルに達します。

水質の特異性

バルハシ湖の最も顕著な特徴の一つは、湖水の性質が東西で大きく異なる点です。湖の西半分は比較的淡水に近い水質であるのに対し、東半分は塩分濃度が高い塩湖となっています。これは、主要な流入河川であるイリ川が湖の西部に注ぎ込んでいることと、湖が東西に細長く、中央部が狭まっている形状をしているため、湖水の混合が進みにくいためと考えられます。さらに、バルハシ湖は流れ出す河川を持たない内陸湖であることも、塩分濃度の分布に影響を与えています。

水系と環境

バルハシ湖に流れ込む河川は、主に南側から来ています。最も重要なのはイリ川で、湖の西部に大量の水を供給しています。その他にも、東部にはアクス川やレプサ川などが流入しています。湖水は流出することなく、蒸発によって失われるため、内陸湖特有の水文バランスを持っています。季節によっては湖面が凍結し、例年11月から翌年4月中旬頃まで結氷状態となります。

湖の南西部、特にイリ川が形成する広大な三角州を含む一帯は、その豊かな生態系が評価されています。この地域は多くの野生動物にとって重要な生息地となっており、コウジョウセンガゼル、マダライタチ、カオジロオタテガモ、アオガン、シップスタージョン（チョウザメの一種）、ニシハイイロペリカンといった多様な生物が見られます。この生物多様性の高さから、2012年にはラムサール条約の登録湿地に指定され、国際的な保護の対象となっています。

周辺地域と環境問題

バルハシ湖の沿岸には、バルハシ市、サリシャガン、レプスイなどの町が点在しており、人々の生活や産業が湖と密接に関わっています。しかし前述の通り、近年の水資源利用の増加や乾燥化傾向、そして産業活動による汚染などにより、バルハシ湖は水量の減少と水質汚染という深刻な環境問題に直面しており、その生態系への影響が懸念されています。

バルハシ湖は、その広大な面積と東西で異なる水質というユニークな性質、そして貴重な生態系を持つ一方で、持続可能な利用と保全に向けた取り組みが喫緊の課題となっています。

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