カオジロオタテガモ

カオジロオタテガモ（顔白尾立鴨）

カオジロオタテガモ（Oxyura leucocephala）は、カモ目カモ科オタテガモ属に分類される鳥類で、その名の通り、白い顔が特徴的な水鳥です。

分布

カオジロオタテガモは、広範囲にわたる地域に分布しています。具体的には、アゼルバイジャン、アフガニスタン、アルジェリア、アルメニア、イスラエル、ウクライナ、ウズベキスタン、イラク、イラン、インド、カザフスタン、キプロス、ギリシャ、ジョージア、シリア、スペイン、タジキスタン、チュニジア、トルクメニスタン、トルコ、パキスタン、ブルガリア、モンゴル、ルーマニアなどが含まれます。

夏季には、アフガニスタン、アルジェリア、イラン、ウズベキスタン、カザフスタン、スペイン、チュニジアなどで繁殖し、冬季になると、イスラエル、イラン北部、インド、エジプト、シリア、トルクメニスタン、パキスタンなどへ移動して越冬します。季節によって生息地を大きく変える渡り鳥です。

形態

カオジロオタテガモは、全長43-48cm程度で、翼長はオスで15.5-17.2cm、メスで15-16.7cmです。翼を広げた際の幅（翼開張）は62-70cmに達します。体重はオスが0.7-0.9kg、メスが0.6-0.8kg程度です。

この種の特徴的な形態として、嘴の鼻部が隆起している点が挙げられます。また、オスとメスで羽衣の色が異なります。オスは頭部の羽衣が白く、頭頂に黒い斑紋が入ります。この「白い頭」が種小名leucocephalaの由来となっています。全身の羽衣は黒褐色で、腹部中央の羽衣は灰白色をしています。嘴の色は鮮やかな青色です。一方、メスは眼先や後頭にかけての羽衣が暗褐色で、頬の羽衣は白く、暗褐色の筋模様が入ります。嘴の色は灰色です。

生態

カオジロオタテガモは、水生植物が豊富に繁茂した淡水湖、アルカリ湖、塩湖などに生息します。これらの湖沼は、彼らにとって重要な食料源や繁殖場所となります。

食性は雑食性で、水面に浮かぶ植物、昆虫、軟体動物、環形動物、魚類などを食べます。水中に潜って採餌することもあれば、水面で餌を漁ることもあります。

繁殖形態は卵生です。繁殖期になると、オスは頭部と尾を垂直に立てながら泳ぎ、メスに求愛します。巣は開けた水辺の近くにある茂みの中に作られ、オオバンなどの古巣を利用することもあります。4-7月にかけて4-9個の卵を産み、抱卵期間は約3週間です。

人間との関係

カオジロオタテガモは、生息地の破壊、水質汚染、漁業による混獲、狩猟など、様々な要因により生息数を減らしています。特に、湿地の干拓による生息地の喪失は深刻な問題です。また、人為的に移入されたアカオタテガモとの競合や、交雑による遺伝子汚染も懸念されています。

過去の記録を見ると、カスピ海での越冬個体数は、1930年代には50,000羽と推定されていましたが、1960年代には1,000羽にまで激減しました。ブルドゥル湖での越冬個体数も、1991年には10,900羽でしたが、1996年には1,270羽に減少しています。これらの数字は、カオジロオタテガモが絶滅の危機に瀕していることを示しています。

カオジロオタテガモの保護のためには、生息地の保全、水質改善、狩猟規制、アカオタテガモとの競合対策など、総合的な取り組みが不可欠です。

もう一度検索