バルプロ酸ナトリウム

バルプロ酸ナトリウムについて

概要

バルプロ酸ナトリウム、または略称VPAは、2-プロピルペンタン酸のナトリウム塩であり、医療現場では主に抗てんかん薬として使われます。この薬剤はフランスで1967年に抗てんかん薬として承認されて以来、国内外で多くの病気の治療に取り入れられています。

バルプロ酸の水溶性の特性により、この薬剤は体内に吸収されやすく、脳内の神経伝達物質であるGABAの濃度を高めることで、その薬理作用を発揮します。さらに近年の研究では、バルプロ酸がさまざまな精神神経疾患に対して作用することがわかっています。

生理活性

バルプロ酸は血液脳関門を通過し、GABAトランスアミナーゼを阻害することによって、脳内でGABAの量を増加させる働きがあります。このメカニズムにより、神経細胞の興奮を抑制し、広範囲な抗痙攣効果を有しています。また、電位依存性ナトリウムチャネルやT型カルシウムチャネルをブロックすることでも、神経の興奮を抑える効果があります。

さらに、神経因性疼痛に対する第2選択薬としての適用もあり、特にAδ線維による激しい痛みに対して治療効果がみられることがあるとの報告もあります。

妊娠中の使用に関しては注意が必要であり、バルプロ酸は胎盤を通過し、用いることで胎児に対する催奇形性のリスクが指摘されています。特に、妊娠中に服用した女性から生まれた子供においては、自閉症の発症リスクが増加する可能性があります。

副作用

この薬剤には重大な副作用も存在します。主な副作用には眠気、ふらつき、消化不良、体重増加、脱毛（約10％に見られる可逆的な脱毛）などがあります。これらに加え、重篤な副作用として、致死的肝障害、高アンモニア血症、血液障害、急性膵炎、重篤な皮膚反応などが指摘されています。

特に、投与量の急激な減少や中止が原因で、てんかん重積状態が起こるリスクもあります。したがって、バルプロ酸の使用を考慮する際には、慎重に医師と相談することが重要です。

医療用途

てんかん

WHOのガイドラインでは、バルプロ酸ナトリウムは、てんかんの治療における選択肢の1つとされています。具体的には、欠神発作や強直間代発作などに用いられることが一般的です。

双極性障害

双極性障害においても、急性躁エピソードの治療に用いられ、リチウムと並んで治療の選択肢として推奨されています。

片頭痛

バルプロ酸は、片頭痛発作の予防にも使用されることがありますが、発作が発生した後の痛みを和らげる効果は見られていません。

その他

いくつかの国では、バルプロ酸は外傷後てんかんの治療にも用いられています。

小史

バルプロ酸の合成は1882年にアメリカで行われ、初めは代謝不活性の溶剤として利用されていました。1962年、フランスの研究者により抗痙攣効果が発見され、1967年に抗てんかん薬として承認されました。その後、双極性障害や片頭痛の治療にも使用されるようになり、国際的にも広がりを見せています。

まとめ

バルプロ酸ナトリウムは、その抗てんかん作用や双極性障害の治療効果から広く使われていますが、副作用のリスクも抱えています。慎重な投与とモニタリングが必須であり、医療従事者との密なコミュニケーションが重要です。

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