バルムンク

『ニーベルンゲンの歌』に登場するバルムンクは、英雄ジークフリートの愛剣として知られています。その剣は、幅広で、黄金の柄には青い宝玉が埋め込まれており、鞘は金色の打紐で巻き上げられた豪華なものでした。北欧神話に登場するグラムや、リヒャルト・ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』に登場するノートゥンクに相当するとされています。

物語の中でバルムンクは、ニーベルンゲン族の王であるシルブンクとニベルンクが、ジークフリートに財宝の分配を依頼した際に彼に贈られました。しかし、分配に不満を抱く者たちが現れ、ジークフリートはその役割を果たすことができませんでした。怒ったジークフリートは、二人の王とニーベルンゲン族の勇者たちを斬り、結果として彼らの宝を手に入れることになります。その後、ジークフリートはバルムンクを愛剣として、数々の軍功を挙げました。

しかし、ジークフリートの活躍を妬むハゲネは、彼の暗殺を企てます。ハゲネは、ジークフリートが反撃できないように、狩りの最中にバルムンクと弓を彼の近くから奪い去りました。不意を突かれたジークフリートは、ハゲネに致命傷を与えることができず、命を落とすことになります。ハゲネはジークフリートを殺害した後、バルムンクを自分の剣としますが、ブルクントの王グンターの供としてフン族の王エッツェルの宮廷を訪れた際、クリームヒルトにバルムンクを誇示して見せました。これにより、彼女の復讐心を煽り立てることになります。

物語の終盤、クリームヒルトは捕らえたハゲネの首をバルムンクで刎ね、ジークフリートの仇を討ちました。バルムンクは、英雄の象徴であると同時に、復讐の道具としても物語の中で重要な役割を果たしています。

このように、バルムンクは『ニーベルンゲンの歌』において、単なる武器ではなく、英雄の運命、富、権力、そして復讐といった様々な要素が絡み合った象徴的な存在として描かれています。剣の輝きは、物語の登場人物たちの欲望と葛藤を照らし出し、壮大な叙事詩を彩る重要な要素となっています。

参考文献
* 『ニーベルンゲンの歌　前編・後編』相良守峯訳、岩波書店、1955年。

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