バルーンさが駅

バルーンさが駅は、佐賀県佐賀市嘉瀬町大字荻野に所在する、九州旅客鉄道（JR九州）長崎本線の駅です。この駅の最も特徴的な点は、年間を通じて利用できる常設駅ではなく、毎年秋に嘉瀬川河川敷で盛大に開催される国際的なイベント、「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」のために、その開催期間中だけ開設される臨時駅であることです。

概要

佐賀インターナショナルバルーンフェスタは、例年10月下旬から11月上旬にかけて約一週間にわたり行われます。バルーンさが駅は、このフェスタ期間中のみ営業を行います。駅が営業している間は、長崎本線を運行する通常の普通列車のほか、バルーンフェスタ開催に合わせて特別に設定される臨時列車「バルーンフェスタ号」、さらには一部の特急列車も停車します。これにより、全国各地、そして海外からも訪れる多くの観覧客が、駅から歩いてすぐのメイン会場へ直接アクセスすることが可能となります。

利用客数は極めて多く、バルーンフェスタ期間中は駅が大変な賑わいを見せます。例えば、2016年度はわずか5日間の営業期間で99,592人もの乗車利用がありました。これは営業日1日あたり平均で19,918人という数になります。この数字は、佐賀県内で最も利用者が多い常設駅である佐賀駅の1日あたり平均乗車人数（2016年度は12,341人）の約1.6倍に相当するものであり、バルーンさが駅がいかに短期間に集中する膨大な観覧客の輸送を担っているかがわかります。

歴史

バルーンさが駅は、佐賀インターナショナルバルーンフェスタの発展とともに開設されました。1989年（平成元年）11月18日に初めて営業を開始して以来、原則として毎年フェスタ期間中に開設されてきました。しかし、2020年（令和2年）と2021年（令和3年）は、新型コロナウイルス感染症の拡大状況を踏まえ、佐賀インターナショナルバルーンフェスタが開催形式を変更（無観客など）したため、それに伴いバルーンさが駅の営業も2年連続で見送られました。3年ぶりの通常開催となった2022年（令和4年）には、駅も無事に営業を再開しました。

近年では、2024年（令和6年）10月3日からは、JR九州のICカード乗車券「SUGOCA」の利用可能エリアが拡大され、当駅でもICカードで乗降できるようになりました。また、同年11月には、大雨予報による会場冠水の懸念からバルーンフェスタが全日程中止となり、駅も予定されていた11月1日からの期間は閉鎖され、フェスタ初日の10月31日のみの営業となるという出来事もありました。

駅構造

バルーンさが駅は地上にホームが設けられた構造です。上り線と下り線それぞれに対して独立した単式ホームが1面ずつ配置されており、その二つのホームの間には観客が移動するための通路が設けられています。この区間の線路は、上り線と下り線で築堤の高さが異なっているため、通常の島式ホームを設置する構造にはなっていません。ホームはどちらも列車進行方向に対して右側に位置しており、上空から見ると、ホームとそれらを繋ぐ通路がアルファベットの「A」や、中央部が細くなった「H」のような特徴的な形に見えます。

ホームは嘉瀬川東岸の築堤上に設置され、駅舎は駅の西側に広がる河川敷に臨時に設けられます。ホームの有効長は約165メートルあり、これは最大8両編成の列車が停車可能な長さで、特急列車の一部が停車できるのもこのためです。かつて特急「かもめ」「みどり」「ハウステンボス」が併結して9両以上の編成で運行されていた時期には、ホーム有効長の関係でこれらの併結列車は当駅には停車しませんでした。また、「ハウステンボス」の前身列車である「オランダ村特急」は停車した記録がありません。

開設当初は、営業期間外には駅舎だけでなくホームも全て撤去されていましたが、2002年（平成14年）にホーム設置作業中の事故で作業員が犠牲となったことを受け、安全確保の観点から、2003年（平成15年）からはホーム部分のみが恒久的な施設として設置されたままとなりました。現在も、駅舎部分は毎年臨時に設営・撤去が行われています。

駅周辺

バルーンさが駅の周辺は、広々とした田畑が広がるのどかな風景が主体で、普段は民家もほとんど見られない静かな環境です。しかし、佐賀インターナショナルバルーンフェスタの期間中は、駅前に広がる嘉瀬川河川敷がイベントのメイン会場となり、色とりどりの熱気球が飛び交い、国内外から集まった大勢の観客で大変な賑わいを見せます。駅の北方約700メートルには、長崎本線と並行して国道34号佐賀バイパスが通っています。また、駅の北側には、嘉瀬川防災ステーションや佐賀市水防センターといった防災関連施設も立地しています。

長崎本線における当駅の隣の駅は、鳥栖方面へ向かう上り方が鍋島駅、佐世保・長崎方面へ向かう下り方が久保田駅です。バルーンさが駅は、これら二つの駅の間に期間限定で現れる特別な存在と言えるでしょう。

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