バレエの情景

バレエの情景

イーゴリ・ストラヴィンスキーが作曲した『バレエの情景』は、音楽とダンスが一体となったバレエ作品であり、その楽曲はコンサート用にも広く演奏されています。1944年に初めて振付を手掛けたのはアントン・ドーリンですが、後にフレデリック・アシュトンによる振付が特に有名です。全曲の初演はストラヴィンスキー自身の指揮のもと、1945年にニューヨーク・フィルハーモニックによって行われました。この作品は、ブロードウェイの影響を受けてジャズやブルースのリズムが取り入れられ、トランペットとホルンの応酬が特色となっています。

作曲の経緯

『バレエの情景』の誕生は、ニューヨークの劇場経営者ビリー・ローズの依頼によるもので、1944年にハリウッドで作曲が開始されました。この作品は、様々な芸術スタイルを融合させたブロードウェイ・レヴューの一部として構想され、オーディエンスの期待を背景にしたものでした。ストラヴィンスキーが作成したピアノ編曲が初めは高く評価されたものの、オーケストラ版は一部の観客から違和感を抱かれ、完全な形での上演は難航しました。その結果、ドーリンは振付に満足できず、再振付を模索しましたが、実現には至りませんでした。

バレエ作品としての開花

アシュトンが『バレエの情景』を真にバレエ作品として育て上げたのは、彼の情熱と創造性のおかげです。彼はもともとストラヴィンスキーの音楽に特別な魅力を感じており、1946年から1947年にかけてラジオで音楽を聴いて振付の構想を膨らませました。音楽が短いと感じたアシュトンは、ストラヴィンスキーに改訂を依頼しましたが、これが拒否されたため、自らの工夫で作品を構築することになります。彼は無機質とも言える旋律の中から、観客の興味を引く方法を模索し、ついにはこの作品のロマンティックな性格に気づくことになります。

彼は『眠れる森の美女』のバラのアダージョに似た振付を第5曲目に取り入れるなど、演出において独自のアプローチを展開しました。そしてシンコペーションを意識してリズムに重視を置くことで、ダンサーたちの表現力を引き出しました。

アシュトン版の初演は1948年2月11日にロンドンで行われ、出演者はM・ソムズとマーゴ・フォンテインでした。批評家たちは最初は厳しい評価を下しましたが、回を重ねるごとにその評価は向上し、現在ではロイヤル・バレエ団の主要なレパートリーの一つとして愛されています。

編成と構成

『バレエの情景』は、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバ、ティンパニ、ピアノなど、多岐にわたる楽器編成が特徴です。また、作品は11曲のシーンから構成されており、演奏時間はオリジナルのスコアで約16分、アシュトンの振付による上演ではやや長めの約18分となります。各曲は、観客を楽しませるために工夫された構成であり、その中に流れるリズムとメロディーは、演者と観客との一体感を生み出します。

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