バローチ人

バローチ人について

バローチ人（英: Baloch, バローチー語: بلوچ）は、主にパキスタン、イラン、そしてアフガニスタンにまたがる広大な地域、通称「バローチスターン」を伝統的な居住地とするイラン系の民族集団です。彼らの居住範囲はこれらの主要国に限定されず、歴史的な移動や離散の結果、近隣のインドやアラビア半島にもバローチ人のコミュニティが形成され、暮らしています。

彼らが使用する言語はバローチー語と呼ばれ、インド・ヨーロッパ語族のイラン語派に属しています。地理的には大イランの南東部に位置しながらも、バローチー語は主に西イラン語群に分類されるという特徴を持っています。

地理的分布と人口規模

バローチ人の人口は、その大部分がパキスタン、イラン、アフガニスタンの三国に分布しています。

パキスタンは最も多くのバローチ人が暮らす国であり、バローチ人総人口のおよそ半数に相当する人々が、同国最西部に位置するバローチスターン州に集中しています。また、パキスタンのシンド州にもバローチ人人口の約4割が定住しており、さらに北部のパンジャブ州にも相当数のバローチ人が暮らしています。パキスタン全体の人口に占めるバローチ人の割合は、約3.6パーセントとされています。

イランにおいても、バローチ人は重要な少数民族であり、主に東部のスィースターン・バルーチェスターン州に居住しています。イランの全人口に占めるバローチ人の割合は約2パーセントで、具体的な人数としては約150万人に上ると推計されています。

アフガニスタンでも、南西部にバローチ人が居住しており、同国人口の約2パーセントを占めていると報告されています。

遺伝的特徴

バローチ人の遺伝的な起源や構成については、Y染色体ハプログループの研究がいくつか行われています。これらの研究は、バローチ人の男性系統が多様な系統から成り立っていることを示唆していますが、研究によって観察されるハプログループの頻度には違いが見られます。

Grugniらによる2012年の研究では、バローチ人のY染色体ハプログループにおいて、ハプログループJが最も高い頻度（41.6%）を示しました。これに続いて、R1aが25%、Lが16.6%という頻度で見出されています。さらに、R1*（R1aおよびR1bを除く）、Q、E、Gといったハプログループもそれぞれ4.2%ずつ確認されています。

一方、2006年に実施された別の研究では、異なるハプログループ構成が報告されています。この研究では、R1aが28%と最も高い頻度を示し、次いでLが24%、Jが16%という結果でした。また、R2が12%、R1bが8%、Eが8%、Hが4%を占めていました。

これらの研究結果から、バローチ人のY染色体にはJ、R1a、Lといった系統が比較的高頻度で含まれていることが共通して示されていますが、それぞれの割合は研究方法や対象集団によって変動することが分かります。

（脚注は入力情報に記載がありましたが、具体的な内容は提供されなかったため、本文には含めていません。）

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