バンデン・プラ

バンデン・プラ：コーチビルダーから高級車メーカーへ

バンデン・プラ (Vanden Plas) は、かつてベルギーとイギリスで活躍した、由緒ある自動車メーカー、もしくはそのブランド名です。現在では、北米以外の地域では南京汽車が、北米ではフォードが、それぞれ商標権を保有しています。

起源と初期の成功

1898年、ベルギーで馬車の車体製造を手掛けるコーチビルダー「Carrosserie Van den Plas」として創業しました。創業家の名前に由来する社名は、オランダ語で「池の」を意味する「van den Plas」から来ています。ベルギーではオランダ語圏では「ファンデン・プラス」、フランス語圏では「ヴァンデン・プラ」と発音されます。

1913年にはイギリスに進出し、支社を設立。イギリスのバンデン・プラは、独立した経営体制でロールス・ロイスやベントレーといった高級車のボディ製造を請け負い、高い技術力と名声を確立していきました。

オースチンとの合併とプリンセスシリーズ

第二次世界大戦後の世界的な不況によりイギリスの自動車産業は大きな打撃を受け、多くのメーカーが合併・吸収を余儀なくされました。バンデン・プラもオースチンに吸収合併され、新たな道を歩むことになります。

オースチン傘下となったバンデン・プラは、オースチン・A99ウェストミンスターをベースにした高級車「バンデンプラ・3リッター」と「バンデンプラ・4リッター」を発売しました。オリジナルのフロントマスクと豪華な内装が特徴で、コーチビルダーとしての経験と技術が活かされた高品質なモデルでした。その後、ロールス・ロイス製エンジンを搭載した「4リッターR」も生産されました。

ADO16をベースにしたプリンセス1100

オースチンは、モーリスを含むナッフィールド・グループと合併してブリティッシュ・モーター・コーポレーション（BMC）を設立しました。バンデン・プラは、BMCにおいてウーズレーと共に高級車部門としての役割を担うことになります。

1962年、BMCはモーリスブランドからADO16を発表しました。このモデルは、後にBMCの各ブランドからバリエーション豊かなモデルが展開されることになります。1964年、バンデン・プラはADO16をベースにした「プリンセス1100」を発表。小型車でありながら、豪華な内装と快適性を両立した革新的なモデルでした。

プリンセス1100は、柔らかなモケット、ウォールナットのウッドパネル、コノリーレザーを使用したシートなど、高級車に匹敵する上質な内装が特徴でした。後席用の折り畳み式ピクニックテーブルも装備され、小型ながらショーファードリブンカーのような雰囲気を醸し出していました。その優雅なスタイルと豪華な内装から「ベビーロールス」とも呼ばれました。その後、排気量1275cc、1300ccのモデルも追加されました。モデルの改良に伴い、マイナーチェンジ前のモデルをMk-I、以降をMk-IIと分類され、最終型のMk-IIIは1974年まで生産されました。

プリンセス1500とその後

その後、オースチン・アレグロをベースにした「プリンセス1500」が発表されましたが、ベース車の設計上の問題やバンデン・プラらしさの欠如から、販売は振るわず、これが「プリンセス」を冠した最後のモデルとなりました。

1968年以降は、ジャガーの上級モデルのグレード名として使用され、現在はジャガーの親会社であるフォードが北米における商標権を保有しています。また、ランドローバーのレンジローバークラシックにも使用された時期がありました。北米以外の地域では南京汽車が商標権を保有しています。バンデン・プラの歴史は、高級車製造における技術力と伝統を物語る、興味深いものです。

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