バンハーン・シラパアーチャー

バンハーン・シラパアーチャー：タイの政治と経済を彩った「うなぎ」

バンハーン・シラパアーチャー（1932年8月19日 - 2016年4月23日）は、タイの政治家、実業家であり、首相も務めた人物です。華人系移民の息子として生まれ、建設業、セメント工場、印刷工場、石油化学工場など幅広い事業を経営し、巨額の資産を築きました。その資産は33億6900万バーツに上るとされ、政界では「歩くATM」という異名を持ちました。

政界での活躍

1976年、バンハーンはスパンブリー県選出の下院議員として政界入りしました。その後、農業相、運輸通信相、工業相、財務相、内務相など、多くの閣僚ポストを歴任し、1994年には国民党の党首に就任しました。1995年7月の総選挙では、国民党を第一党に導き、7党連立政権を樹立、首相に就任しました。

首相在任中は、民主化への道を模索するとともに、第5回ASEANサミット、ASEM会議議長国として外交面でも一定の成果を上げました。しかし、経済の停滞や度重なる汚職疑惑により国民の支持を失い、1996年9月には内閣不信任決議案審議後、解散総選挙に追い込まれました。選挙の結果、チャワリット率いる新希望党が第一党となり、バンハーンは政権を譲ることになりました。

首相辞任後も国民党党首を務め、タクシン内閣期には与党、その後は野党として活動しました。2006年の軍事クーデターでタクシンが失脚した後は、タクシン派との距離を置く発言をしましたが、タクシン派が政権を奪還すると与党に復帰しました。しかし、2008年には選挙違反で国民党が解党、5年間の参政権停止処分を受けました。その後、反タクシン派のアピシット内閣で与党となったタイ国民開発党の顧問として政治活動を続けました。

「うなぎ」と評された政治手腕

バンハーンは、少数政党の党首としてキャスティング・ボートを駆使し、内閣を渡り歩いたことから、「うなぎ」と評されるようになりました。これは、彼の掴みどころのない政治スタイルと、政局を巧みに泳ぎ渡る様子を表しています。

また、2010年にはバンコクの自宅前に手りゅう弾が投げ込まれる事件が発生。幸い本人は無事でしたが、負傷者が出ました。

地元への貢献

バンハーンは、選挙区であるスパンブリー県に強い地盤を持っていました。彼は選挙に強いだけでなく、地元への公共事業誘致にも尽力し、県を大きく発展させました。スパンブリー県には、タイ屈指の中央分離帯と街路樹を備えた広い道路が整備され、バンハーンの名前を冠した施設が多数存在します。

特に有名なのが、チャルーム・パッタラ・ラーチーニ公園内にある「バンハーン・ジャムサイ・タワー」です。これは、バンハーンが主宰する財団によって1992年に建設された、タイ初のタワーであり、高さ123.25メートルを誇ります。観光名所としても知られており、多くの人々が訪れます。

その生涯

バンハーン・シラパアーチャーは、2016年4月23日にバンコクで83歳でその生涯を閉じました。彼の政治と経済への貢献、そして地元への愛情は、今もなお語り継がれています。

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