バーズ (アメリカのバンド)

バーズ（The Byrds）

バーズは、1960年代のアメリカを代表するロックバンドであり、フォークロックというジャンルを確立したパイオニア的存在です。1964年にカリフォルニア州ロサンゼルスで、ロジャー・マッギン、ジーン・クラーク、デヴィッド・クロスビーによって結成され、後にクリス・ヒルマンとマイケル・クラークが加わりました。彼らの音楽は、フォークの温かみとロックのリズム、そして美しいハーモニーが融合した独特なもので、「ビートルズとボブ・ディランの中間」と評されることもあります。

歴史

結成前夜：ジェット・セット

バーズの創設メンバーであるマッギン、クラーク、クロスビーは、それぞれソロやフォークグループで活動していました。1964年、ブリティッシュ・インヴェイジョンに影響を受けたマッギンは、ビートルズのカバーを演奏するようになります。その後、クラークとのデュオを経て、クロスビーを加えて「ジェット・セット」を結成。彼らは、フォークとロックの融合を試み、マネージャー兼プロデューサーのジム・ディクソンのサポートを受け、音楽性を追求しました。ドラマーのマイケル・クラークは、ドラム経験はなかったものの、その容姿が買われて加入しました。

当初は「ザ・ビーフィターズ」と名乗り活動した時期もありましたが、商業的な成功には至りませんでした。しかし、ディクソンがボブ・ディランの未発表曲「ミスター・タンブリン・マン」を入手し、ロックアレンジを施したことが転機となります。この曲を聴いたディラン自身も驚き、彼らの音楽性を高く評価しました。そして、マンドリン奏者だったクリス・ヒルマンがベーシストとして加わり、バンドは大きく変化を遂げました。翌年、コロムビア・レコードとの契約に成功し、「バーズ」へと改名しました。

フォークロックからサイケデリックロックへ

1965年4月、バーズは「ミスター・タンブリン・マン」でデビュー。同曲は、全米・全英でチャート1位を獲得し、フォークロックブームを巻き起こしました。デビューアルバムも大ヒットを記録し、彼らは「アメリカのビートルズへの回答」と評されました。その後も、「ターン・ターン・ターン」などのヒットを連発しましたが、マネージャーやプロデューサーとの対立、メンバー間の不和が表面化し始めました。

1966年初頭、ジーン・クラークが脱退し、サイケデリックな要素を取り入れた「霧の8マイル」を発表。この曲は、サイケデリック・ロックの先駆けとされ、その実験的なサウンドは、後の音楽シーンに大きな影響を与えました。アルバム『霧の5次元』をリリースした後も、彼らはイギリスのロックバンドとの交流を深め、音楽性を追求し続けました。

1967年には、コンセプトアルバム『昨日よりも若く』を発表。この頃から、メンバー間の不和が深刻になり、特にマッギンの独裁的な態度にクロスビーが反発を強めました。彼らは、社会風刺的な歌詞を含む楽曲を発表しましたが、サイケデリックロックの人気が下火になったこともあり、大きな注目を集めることはありませんでした。

1968年1月、『名うてのバード兄弟』をリリース。しかし、このアルバム制作中にメンバー間の対立が激化し、マイケル・クラークが脱退、そしてクロスビーが解雇されるという事態に。その後、ジーン・クラークが一時的に復帰するも、すぐに脱退。バンドは崩壊寸前の状態となりました。

カントリーロックへの転換

メンバーを失ったバーズは、ヒルマンが中心となり、カントリーロックの要素を取り入れるようになります。グラム・パーソンズがキーボーディストとして加入したことで、バーズの音楽性は大きく変化しました。彼らは、カントリー音楽の本場であるナッシュビルでアルバム『ロデオの恋人』を制作しましたが、パーソンズの奔放な行動が問題となり、彼はすぐに解雇されました。このアルバムは、カントリーロックの原点として評価されるものの、当時は商業的に失敗しました。

新体制と解散、そして再結成

パーソンズの脱退後、バーズはメンバーを入れ替えながら活動を続けましたが、創設メンバーはマッギンのみとなりました。1971年までにアルバムを5枚リリースしましたが、チャートでは下位に留まりました。

1972年、マッギンは初期メンバーと再会し、バーズ再結成を計画。1973年に再結成アルバム『オリジナル・バーズ』をリリースし、久しぶりにチャート上位にランクインしました。しかし、再結成後の活動は短期間で終わり、バンドは再び解散しました。その後、メンバーはそれぞれのソロ活動や他のバンドで活動を開始しました。

1977年にはマッギン、クラーク、ヒルマンの3人でヨーロッパツアーを行いましたが、これも関係悪化により途中終了しました。しかし、後に「マッギン・クラーク&ヒルマン」を結成し、一定の成功を収めました。1980年代には、ジーン・クラークがバーズの名前を使って活動したことが、他のメンバーとの訴訟に発展するなど、波乱がありました。

1991年、バーズはロックの殿堂入りを果たし、オリジナルメンバー5人が揃いました。しかし、その後ジーン・クラークとマイケル・クラークが相次いで亡くなり、創設メンバーは3人となりました。

2000年代にも、マッギン、クロスビー、ヒルマンの3人で再会し、共演を果たしましたが、2023年にクロスビーが亡くなりました。

現在、オリジナルメンバーで活動を続けているのは、ロジャー・マッギン、クリス・ヒルマン、ジーン・パーソンズ、ジョン・ヨークです。

音楽性

バーズの音楽は、フォークミュージックの温かみと、ロックンロールのリズム感を融合させた独自のスタイルが特徴です。12弦ギターを駆使したマッギンの演奏や、美しいハーモニーが彼らのサウンドを特徴づけています。フォークロックからサイケデリックロック、そしてカントリーロックへと、時代とともに変化を遂げた彼らの音楽は、後世のミュージシャンたちに大きな影響を与えました。

ディスコグラフィー

オリジナル・アルバム

『ミスター・タンブリン・マン』 (1965年)
『ターン・ターン・ターン』 (1965年)
『霧の5次元』 (1966年)
『昨日よりも若く』 (1967年)
『名うてのバード兄弟』 (1968年)
『ロデオの恋人』 (1968年)
『バーズ博士とハイド氏』 (1969年)
『イージー・ライダー 』 (1969年)
『(タイトルのないアルバム)』 (1970年)
『バードマニア』 (1971年)
『ファーザー・アロング』 (1971年)
『オリジナル・バーズ』 (1973年)

ベスト・アルバム

『グレイテスト・ヒッツ』 (1967年)
『ザ・ベスト・オブ・ザ・バーズ - グレイテスト・ヒッツ・ヴォリュームII』 (1971年)

ライブ・アルバム

『ライヴ・アット・ザ・フィルモア 1969』 (2000年)

メンバー

ロジャー・マッギン（ギター、ボーカル）
ジーン・クラーク（ギター、ボーカル）
デヴィッド・クロスビー（ギター、ボーカル）
クリス・ヒルマン（ベース、ボーカル）
マイケル・クラーク（ドラムス）


バーズは、その音楽性と影響力において、ロック史にその名を刻む重要なバンドの一つです。

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