バーデン・パウエル

バーデン・パウエル：ブラジル音楽界のギター巨匠

バーデン・パウエル（Baden Powell de Aquino、1937年8月6日 - 2000年9月26日）は、20世紀のブラジル音楽を代表するギタリスト、作曲家として知られています。リオデジャネイロ州のバレ＝サイで生まれ、その名はボーイスカウトの創始者、ロバート・ベーデン＝パウエル卿に由来します。

生い立ちと音楽への目覚め

父親は靴職人であり、チューバ奏者でもありました。幼い頃から音楽に囲まれた環境で育ち、当初はヴァイオリンを習っていましたが、4歳の時にギターに転向。8歳からブラジル古典音楽の教育を受け始めます。10代の頃には、エスコーラ・ヂ・サンバ・エスタサォン・プリメイラ・チ・マンゲイラに所属し、サンバのリズムに触れながら、15歳でナイトクラブでの演奏活動を開始。早くからギタリストとしての才能を開花させていきました。

サンバ・トリスチの成功とヴィニシウス・ヂ・モライスとの出会い

19歳で作曲した「悲しみのサンバ (Samba Triste)」が大ヒットし、一躍その名を知られるようになります。その後、アントニオ・カルロス・ジョビンをはじめとする多くのボサノヴァミュージシャンと共演。24歳の時に、詩人ヴィニシウス・ヂ・モライスと運命的な出会いを果たします。

モライスとの共作は、バーデン・パウエルの音楽キャリアにおいて重要なターニングポイントとなりました。アルバム『アフロ・サンバ』や、映画『男と女』のサウンドトラックなどを手掛け、サンバ、ボサノヴァ、そしてアフロブラジリアンの要素を融合させた、独自の音楽スタイルを確立しました。

ヨーロッパでの成功と日本での影響

1967年、ベルリンで開催されたギターワークショップで、バニー・ケッセルやジム・ホールといった大御所を前に、その独創的なアプローチと奏法で観客を魅了。ヨーロッパ中にその名が知れ渡ることとなります。1970年代にはヨーロッパに拠点を移し、モライスと生み出した土着的宗教をテーマにした世界観や、ブラジル民謡、バッハなどのクラシック音楽の要素を取り入れた作曲を追求。ボサノヴァの枠に留まらない、独自の音楽性を確立しました。

また、1970年と1971年には来日。当時ギターを志していた日本の若者たちに大きな衝撃を与え、一大ブームを巻き起こしました。その影響は大きく、佐藤正美など、現在も活躍する多くのギタリストにバーデン・パウエルの音楽性が受け継がれています。

その後

その後もヨーロッパを中心に活動を続け、離婚、再婚、入院などを経験しながらも、世界各地でコンサートやテレビ出演を行いました。1970年代中盤から体調を崩し、1980年代中頃まで活動を休止しますが、1983年にドイツのバーデン＝バーデンに移住し静養した後、1980年代終盤から活動を再開。1988年にはブラジルに帰国し、1990年代には再び来日を果たすなど、精力的に音楽活動を展開しました。

晩年と死

2000年9月26日、肺炎のためリオデジャネイロで死去。享年63歳でした。

マリア・ベターニャは、「ヴィニシウス・ヂ・モライスとバーデンの出会いは、ボサノヴァを生み出したヴィニシウス・ヂ・モライスとアントニオ・カルロス・ジョビンの出会いと同じくらい、ブラジル音楽にとって重要な意味を持つ」と語っています。

バーデン・パウエルの音楽は、サンバやボサノヴァといったブラジルの伝統音楽を基盤にしながらも、クラシック、ジャズ、アフリカ音楽など、様々な音楽的要素を融合させた、独創的なものでした。その卓越したギターテクニックと、豊かな音楽性は、世界中の音楽ファンを魅了し、後世の音楽家たちに多大な影響を与え続けています。

[ディスコグラフィーは省略]

[外部リンクは省略]

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