アントニオ・カルロス・ジョビン

アントニオ・カルロス・ジョビン：ボサノヴァの巨匠

アントニオ・カルロス・ブラジレイロ・ヂ・アウメイダ・ジョビン（1927年1月25日 - 1994年12月8日）は、トム・ジョビンの名で世界的に知られるブラジルの作曲家、ミュージシャンです。20世紀のブラジル音楽を代表する存在であり、ボサノヴァの創始者の一人として、その音楽は今もなお世界中の人々を魅了し続けています。

生涯

リオデジャネイロで生まれたジョビンは、幼少期から音楽に親しみ、14歳でピアノを始めました。当初は建築家を目指しましたが、音楽への情熱を捨てきれず、ラジオやナイトクラブで演奏活動を開始。そこで才能を見出され、レコード会社で編曲や譜面起こしの仕事に携わることになります。

1950年代後半、ジョアン・ジルベルト、ヴィニシウス・ヂ・モライスらと出会い、ボサノヴァを創始。ジョアン・ジルベルトの画期的なギター奏法と歌声に感銘を受けたジョビンは、ヂ・モライスとの共作「想いあふれて (Chega de Saudade)」を提供し、これがボサノヴァの幕開けとなりました。

「想いあふれて」以降、ジョビンの楽曲は多くのボサノヴァ・アーティストに演奏され、世界的なヒット曲を次々と生み出しました。特に、ヂ・モライスとの共作「イパネマの娘 (The Girl From Ipanema)」は、ボサノヴァの代名詞として、数えきれないほどのアーティストによってカバーされています。

1965年には、自身がボーカルをとる作品を発表し始め、1967年にはフランク・シナトラとの共演も果たしました。アメリカでも高い人気を博し、クリード・テイラーのCTIレコードからインストゥルメンタル・アルバム『波 (Wave)』を発表。クラウス・オガーマンのアレンジによるこのアルバムは、ボサノヴァを基調としたクロスオーバー作品として評価されました。

1970年代に入ると、創作ペースは落ちましたが、ミウシャやエリス・レジーナとの共演で自身の歌声を披露。エリス・レジーナとのデュエット曲「三月の水 (Águas de Março)」は、特に人気を博しました。晩年は、家族を中心としたバンド「バンダ・ノヴァ」を結成し、ライブ活動やアルバム制作を行いました。環境問題への関心も強く、アマゾン熱帯雨林保護の活動にも積極的に参加しました。

1994年、ニューヨークで心不全のため死去。彼の死はブラジル全土で悼まれ、3日間の服喪期間が設けられました。

音楽的特徴と影響

ジョビンの音楽は、サンバ、ショーロ、ジャズ、クラシックなど、様々な音楽の影響を受けています。繊細なメロディーと洗練されたコード進行、そしてブラジルの自然や文化をテーマにした歌詞が特徴です。彼の音楽は、ボサノヴァというジャンルを超えて、世界中の音楽家や聴衆に影響を与え続けています。

代表曲

イパネマの娘 (The Girl From Ipanema)
想いあふれて (Chega de Saudade)
ヂザフィナード (Desafinado)
ワン・ノート・サンバ (One Note Samba)
静かな夜 (Corcovado)
ジェット機のサンバ (Samba do Avião)
波 (Wave)
三月の水 (Águas de Março)

遺産

ジョビンの音楽は、今もなお世界中で愛され、演奏されています。彼の功績を称え、リオデジャネイロの国際空港は「アントニオ・カルロス・ジョビン国際[[空港]]」と名付けられました。また、リオデジャネイロパラリンピックのマスコット「トム」は、彼の愛称に由来しています。

アントニオ・カルロス・ジョビンは、ブラジル音楽の歴史に燦然と輝く、不朽の音楽家です。

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