バーナード星

バーナード星とは

バーナード星は、へびつかい座の方向にある恒星で、9.5等級と暗く肉眼では見えません。しかし、その特徴的な性質から、天文学の世界ではよく知られた存在です。

発見と命名

1916年、アメリカの天文学者エドワード・エマーソン・バーナードが、過去の写真乾板との比較からその存在を発見しました。彼の名前にちなんで「バーナード星」と名付けられ、2017年には国際天文学連合によって正式な固有名として承認されました。「バーナードの馳走星」とも呼ばれることがあります。

特徴

固有運動：
バーナード星は、全天で最も大きな固有運動を持つ星として知られています。1年あたり約10.29秒角という速さで天球上を移動しており、これは351年に1度移動する速さです。このような大きな固有運動を持つ恒星は「高速度星」と呼ばれ、他にカプタイン星やグルームブリッジ1830などが知られています。

距離：
この大きな固有運動の一因は、バーナード星が太陽系から約6光年という比較的近い距離に位置しているためです。これは、ケンタウルス座α星系に次いで2番目に近い恒星です。現在、バーナード星は太陽系に接近しており、約11800年後には約3.75光年まで近づくと予想されています。

物理的性質：
バーナード星は、視等級9.53等のM型主系列星、いわゆる赤色矮星です。その直径は太陽の約5分の1、質量は16%程度、密度は40倍、光度は2500分の1と、太陽に比べて非常に小さく暗い星です。表面温度は約3200Kと低く、地球が太陽から受けるのと同等のエネルギーを得るには、バーナード星から約0.08auまで近づく必要があります。この位置からバーナード星を見ると、見かけの大きさは太陽の3倍程度になると考えられています。

惑星系

バーナード星の周囲には、惑星が存在するという主張が過去に何度もなされてきました。しかし、初期の主張は後に否定され、近年になって新たな発見が報告されています。

過去の主張と否定：
1960年代から1970年代にかけて、ピート・ファンデカンプはバーナード星の周囲に惑星が存在すると主張しました。彼は、巨大ガス惑星が公転しているという具体的な主張をしましたが、その後の研究で否定されました。

2018年の惑星候補:
2018年11月、スーパーアースとみられる惑星候補がバーナード星の周囲を公転しているという報告がありました。この惑星候補は最小質量が3.2地球質量で、主星から0.4au離れた場所を公転していると考えられていました。しかし、2021年7月の研究で、この惑星の存在は否定されました。

2024年の惑星発見:
2024年8月、超大型望遠鏡VLTのESPRESSO分光器の観測データにより、最小質量0.37±0.05地球質量、公転周期3.15日の太陽系外惑星が確認されました。これは、バーナード星を公転する惑星の最初の説得力のある証拠です。この惑星はバーナード星bと命名され、過去の惑星候補の名前が再利用されています。さらに、この研究では他にも3つの低質量惑星候補が存在する可能性が示唆されていますが、これらはハビタブルゾーンよりも主星に近い場所に位置しています。

存在が否定された惑星の詳細

位置天文学的な捜索:
1960年代、ピート・ファンデカンプはバーナード星の固有運動における摂動を検出したと主張し、惑星の存在を報告しました。彼は、その惑星が木星の1.6倍の質量を持ち、バーナード星から4.4 au離れているとしました。その後、2つの惑星が存在する可能性も示唆しましたが、この観測結果は望遠鏡の誤差によるものと指摘され、1970年代には誤りであったと結論付けられました。

2018年の惑星候補のその後:
2018年に発見されたとされるスーパーアース候補は、当初、プロキシマ・ケンタウリbに次いで2番目に地球に近い太陽系外惑星とされていました。しかし、その後の研究で、この惑星の存在を示す視線速度の信号は、恒星の自転周期のエイリアスによるものである可能性が指摘され、2021年にはその存在が否定されました。この惑星は、かつて「バーナード星b」と呼ばれていましたが、2024年に別の惑星が発見された際、その名称が改めて使用されることになりました。

フィクションへの登場

惑星の存在が信じられていた時期には、SF作品でしばしば登場し、ダイダロス計画の目標天体としても採用されました。このように、バーナード星は科学的な興味だけでなく、フィクションの世界でも重要な役割を果たしてきた星と言えるでしょう。

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