バーニン

アルバム『バーニン』（Burnin'）

『バーニン』は、ジャマイカを代表するレゲエグループ、ザ・ウェイラーズが1973年に発表したスタジオ・アルバムです。彼らにとってアイランド・レコードからの2作目にあたり、特にボブ・マーリー、ピーター・トッシュ、バニー・ウェイラーというオリジナルメンバー3人が揃って制作した最後のアルバムとして、その後のグループの変遷を知る上でも非常に重要な位置を占めています。

制作背景

前作『キャッチ・ア・ファイア』が、英米を中心としたロック市場で一定の成功を収めたものの、当時のレゲエミュージックはまだ主流とは言えない状況でした。特にアメリカでの認知度は限定的で、配給元のキャピトル・レコードのプロモーションも積極的とは言えませんでした。しかし、前作への音楽評論家や熱心な音楽ファンの肯定的な反応を見たアイランド・レコードの創設者、クリス・ブラックウェルは、ザ・ウェイラーズの可能性を強く感じ、ボブ・マーリーに次作の制作とそれに伴うツアーの準備を促しました。こうした背景から、『バーニン』は前作からわずか約半年という短期間で制作され、1973年10月19日にリリースされる運びとなりました。

音楽性と収録曲

本作は、前作のサウンドを引き継ぎつつも、より直接的で対決的なメッセージ性を帯びた楽曲が多く収録されています。冒頭を飾る「ゲット・アップ、スタンド・アップ」は、後に多くのアーティストにカバーされる彼らの代名詞ともなったアンセムであり、不正に対する立ち上がりを力強く訴えかけます。エリック・クラプトンによるカバーでも広く知られるボブ・マーリーの代表曲「アイ・ショット・ザ・シェリフ」もこのアルバムに収録されています。その他にも「バーニン・アンド・ルーティン」など、社会的なメッセージや抵抗のテーマを扱った楽曲が目立ちます。また、「ダピー・コンカラー」、「スモール・アクス」、「プット・イット・オン」といった、以前から存在した楽曲の再録バージョンも収録されており、彼らの初期からの軌跡を感じさせます。

アルバムの中盤には、バニー・ウェイラーがリードボーカルを取る「ハレルヤ・タイム」や「パス・イット・オン」、ピーター・トッシュが歌う「ワン・ファウンデーション」など、ボブ・マーリーとは異なる穏やかさやスピリチュアルな雰囲気を持つ楽曲が配置されており、アルバム全体のトーンに多様性を与えています。アルバムの最後を締めくくる「ラスタマン・チャント」は、ラスタファリ運動の儀式で演奏されるナイヤビンギのリズムを取り入れた、アルバム中でも特徴的な一曲です。

評価と後世への影響

『バーニン』は商業的にも批評的にも成功を収めました。1975年にはアメリカのビルボードチャートで、ポップアルバムチャートで151位、ブラックアルバムチャートでは41位を記録しています。また、音楽史におけるその重要性は高く評価されており、『ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500』では、319位にランクインしています。

アルバムのリリース後、ピーター・トッシュとバニー・ウェイラーはザ・ウェイラーズを脱退し、それぞれがソロアーティストとしての道を歩み始めます。これにより、ボブ・マーリーを中心とした「ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ」へと編成が変化することになり、本作はグループの初期における一つの時代の終焉を示す作品ともなりました。

アートワークとクレジット

アルバムの印象的なゲートホールド・ジャケット写真は、後に映画監督としても活動するエスター・アンダーソンによって撮影されました。

主要な参加ミュージシャンと制作スタッフは以下の通りです。

ボブ・マーリー: ギター、リード・ボーカル、バッキング・ボーカル
ピーター・トッシュ: ピアノ、オルガン、ギター、リード・ボーカル、バッキング・ボーカル
バニー・ウェイラー: コンガ、ボンゴ、リード・ボーカル、バッキング・ボーカル
アストン "ファミリーマン" バレット: ベースギター
カールトン・バレット: ドラムス
アール "ワイヤ" リンド: キーボード、ボーカル
アルビン "シーコ" パターソン: パーカッション

録音スタジオ: ハリー・J・スタジオ、ジャマイカ・キングストン
エンジニア: Sylvan Morris
ミキシング: アイランド・スタジオ、ロンドン
エンジニア: Tony Platt、Phil Brown
プロデュース: クリス・ブラックウェル、ザ・ウェイラーズ

収録曲リスト

オリジナル・リリース (A/B面)

A面
1. ゲット・アップ、スタンド・アップ (Get Up, Stand Up)
2. ハレルヤ・タイム (Hallelujah Time)
3. アイ・ショット・ザ・シェリフ (I Shot the Sheriff)
4. バーニン・アンド・ルーティン (Burnin' and Lootin')
5. プット・イット・オン (Put It On)
B面
1. スモール・アクス (Small Axe)
2. パス・イット・オン (Pass It On)
3. ダッピー・コンカラー (Duppy Conqueror)
4. ワン・ファウンデーション (One Foundation)
5. ラスタマン・チャント (Rastaman Chant)

CDボーナストラック

リインカーネイテッド・ソウルズ (Reincarnated Souls)
ノー・シンパシー (No Sympathy)
オプレスド・ソング (The Oppressed Song)

2004年 デラックス・エディション (抜粋)

Disc One (Burnin' Remastered + Bonus)
オリジナル収録曲のリマスター音源
上記CDボーナストラック
Get Up, Stand Up (Unreleased Alternate Take)
Get Up, Stand Up (Unreleased Single Version)
Disc Two (Live At Leeds, November 23, 1973)
Duppy Conqueror
Slave Driver
Burnin' And Lootin'
Can't Blame The Youth
Stop That Train
Midnight Ravers
No More Trouble
Kinky Reggae
Get Up, Stand Up
Stir It Up
Put It On
* Lively Up Yourself

『バーニン』は、ザ・ウェイラーズの歴史において転換点となった作品であり、彼らの初期の結束と、社会への強いメッセージが詰まった不朽の名盤として、今日まで多くの音楽ファンに聴き継がれています。

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