バーバリライオン

バーバリライオン：北アフリカの雄大な王者

バーバリライオン（Panthera leo leo）は、ネコ科に属するライオンの一亜種であり、かつて北アフリカのマグリブ地域（現在のリビアからモロッコにかけて）に生息していました。アトラスライオンとも呼ばれ、その特徴は、腹部や背中まで伸びる長く豊かな鬣です。

形態と生態

剥製の記録によると、オスの全長は2.35～2.8メートル、メスは2.5メートルに達しました。頭骨の大きさは30.85～37.23センチメートルと、他のライオンと大きな違いは見られません。19世紀のハンターの証言では、バーバリライオンは最大のライオンであり、野生のオスは270～300キログラムの体重があったとされていますが、具体的な数値データは不足しています。興味深いことに、バーバリライオンは他の哺乳類とは異なり、野生個体よりも飼育個体のほうが小型化する傾向がありました。これは、古代ローマ帝国や動物園などにおける劣悪な飼育環境が原因と考えられています。また、他のライオンとは異なり、山間の森林地帯を好んで生息していた点も特徴的です。古代の文献に登場するガエトゥリライオンは、その特徴からバーバリライオンと同一視されることもあります。

絶滅への道

地中海周辺では、古くから人間の活動が活発であり、バーバリライオンは、その雄々しい姿から見世物として利用されてきました。古代ローマ時代には、カエサルが400頭、ポンペイウスが600頭ものバーバリライオンを戦勝パレードのためにローマへ連れてきた記録があり、競技場で剣闘士と戦わせることもありました。ローマ帝国衰退後も、人間の活動範囲の拡大に伴い、生息地は減少の一途を辿りました。近代に入ると、娯楽としての狩猟や動物園での展示目的の捕獲によって、さらに追い詰められました。アルジェリアとチュニジアでは1891年に姿を消し、モロッコでは1922年に最後の野生個体が射殺されたと考えられています。しかし、後の調査では、アルジェリアやモロッコに小規模な個体群が1960年代まで生存していた可能性も示唆されています。

再発見と保護への希望

1996年に行われた調査によって、バーバリライオンの血を引く個体が再発見されました。2007年には、純血種ではないものの、1頭の生息が確認されました。現在、混血種の飼育下繁殖も行われており、フランスの動物園では約50頭が飼育されています。また、モロッコのムハンマド5世の私的動物園では、献上品として捕獲されたバーバリライオンの血統を色濃く受け継ぐ個体群が飼育されており、全世界で確認されている個体数の半数にあたる32頭が生き残っていたことが判明しました。2012年には、首都ラバトにラバト動物園が開園し、繁殖に向けた取り組みが行われています。動物園の開園直後には、3頭の子ライオンが誕生するという明るいニュースも伝えられました。

文化の中のバーバリライオン

アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズには、まだ野生のバーバリライオンが残っていた時代を背景とした物語が登場します。「マザリンの宝石」では登場人物がアルジェリアでのライオン狩りの話を語り、「覆面の下宿人」ではサーカスの猛獣使いが「サハラ・キング」と呼ばれる北アフリカ産のライオンを調教していたという話が出てきます。また、エドガー・ライス・バローズ著『ターザンの復讐』には、仏領北アフリカで原住民に恐れられる「エラドリア」というライオンが登場します。ディズニー映画『ライオンキング』に登場する悪役、スカーはバーバリライオンがモデルとされています。

関連項目

* 絶滅した動物一覧

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