バール・フィリップス

バール・フィリップス：即興演奏のパイオニア

バール・フィリップス（Barre Phillips、1934年10月27日 - 2024年12月28日）は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコに生まれたジャズベーシストであり、即興演奏の分野における先駆者として広く知られています。

生涯と音楽活動

1960年代初頭からプロのミュージシャンとして活動を開始し、1962年にニューヨークへ、その後1967年にはヨーロッパへと拠点を移しました。1972年以降は南フランスに定住し、2014年には「欧州即興センター (European Improvisation Center)」を設立、後進の育成にも尽力しました。

音楽家としての初期には、サンフランシスコ交響楽団のアシスタント・プリンシパル・ベーシストであるS.チャールズ・シアニに師事しました。1960年代には、エリック・ドルフィー、ジミー・ジュフリー、アーチー・シェップ、ピーター・ネロ、アッティラ・ゾラー、リー・コニッツ、マリオン・ブラウンなど、数多くの著名なジャズミュージシャンと共演し、レコーディングも行いました。

ソロベースの先駆者

バール・フィリップスは、1968年に録音されたソロベースの即興演奏アルバムで、その名をジャズ史に刻みました。このアルバムは、アメリカでは『Journal Violone』、イギリスでは『Unaccompanied Barre』、フランスでは『Basse Barre』というタイトルでリリースされ、ソロベースのレコードとしては最初のものとして広く認識されています。また、1971年にはデイヴ・ホランドとのデュエットアルバム『ベーシック・ダイアローグ』を発表し、これも即興によるコントラバス・デュエットの最初の録音として評価されています。

グループ活動とコラボレーション

1970年代には、サックス奏者のジョン・サーマン、ドラマーのステュ・マーティンと共に、影響力の高いグループ「ザ・トリオ」を結成し、高い評価を得ました。1980年代から1990年代にかけては、ベーシストのバリー・ガイが率いるロンドン・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラと定期的に共演しました。映画音楽にも携わり、『Merry-Go-Round』（1981年）、『裸のランチ』（1991年、オーネット・コールマンと共演）、『Alles was baumelt, bringt Glück! 』（2013年）などのサウンドトラックに参加しています。

その他にも、ペーター・コヴァルト、ジョエル・レアンドル、デレク・ベイリー、テオ・ユルゲンスマン、アウレリアン・ベスナード、ペーター・ブロッツマン、エヴァン・パーカー、ジョー・マネリ、ポール・ブレイなど、数多くのミュージシャンと共演し、その創造性を刺激しあいました。

家族

バール・フィリップスは、ロックギタリストのジェイ・クロフォード、ベーシストのデイヴ・フィリップス、そして1987年に「Quel souci LaBoétie」という曲をヒットさせた歌手のクローディア・フィリップスの父親でもあります。

2024年12月28日、ニューメキシコ州ラス・クルーセスにて90歳で永眠しました。

音楽的遺産

バール・フィリップスの音楽は、即興演奏の可能性を追求し、ベースという楽器の新たな表現方法を開拓したことで、後世のミュージシャンに大きな影響を与えました。彼の革新的なアプローチは、ジャズの枠を超え、現代音楽の分野にも貢献しています。

主要ディスコグラフィー

Journal Violone (1969年)
ベーシック・ダイアローグ (1971年、デイヴ・ホランドとの共演)
マウンテンスケイプス (1976年)
宇宙幻覚 (1978年)
* ザ・トリオ (1970年、ジョン・サーマン、ステュ・マーティンとの共演)

(その他多数)

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