バーンク・バーン

バーンク・バーン（生没年不詳）は、13世紀のハンガリー王国で活躍した貴族です。彼の名前は「バーンクという総督」を意味し、その生涯はハンガリーの歴史と深く結びついています。

バーンクは、クロアチア＝スラヴォニア総督を経て、1212年/13年にはハンガリーの副王に就任しました。当時、アンドラーシュ2世の妃であったゲルトルードは、チロルのメラーノ出身であり、夫が遠征で国を留守にしている間、外国人廷臣を重用し、贅沢な生活を送っていました。彼女が集めた外国人は政治にも関与し、愛国的なマジャール人の廷臣たちは不満を募らせていました。

1213年、アンドラーシュ2世がガリツィアへ遠征に出ている間に、ゲルトルード暗殺事件が発生します。この計画には、宮廷から遠ざけられていたバーンクも加わっていました。バーンクらの行動は、愛国的なものと見なされましたが、処罰は免れませんでした。彼は地位と領地を没収された後、クロアチア＝スラヴォニア総督に復職しています。

19世紀に入ると、バーンクの愛国的、民族愛的行為は再評価されるようになります。オーストリアの劇作家フランツ・グリルパルツァーをはじめ、ハンガリー内外の作家が彼の生涯を題材とした作品を発表しました。中でも、1814年にカトナ・ヨージェフが発表した戯曲『バーンク・バーン』は最も有名な作品として知られています。しかし、この戯曲は、当時のハンガリーが外国の支配下にあった情勢を反映していたため、長年にわたり公演が禁止されていました。

カトナの『バーンク・バーン』は、1861年にエルケル・フェレンツによってオペラ化されました。エルケルの『バーンク・バーン』は、今日ではハンガリーの国民的行事で上演されるなど、国民的な作品として愛されています。

参考文献
南塚信吾「バーンク・バーン」『東欧を知る事典』収録（平凡社, 2001年3月）
パムレーニ・エルヴィン編『ハンガリー史 1』増補版（田代文雄、鹿島正裕訳, 恒文社, 1990年2月）
スタンリー・セイディ編『新グローヴ オペラ事典』（中矢一義、土田英三郎日本語版監修, 白水社, 2006年9月）

関連項目

バーンク・バーン (オペラ)

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