パイオニア10号

パイオニア10号の概要

パイオニア10号（英: Pioneer 10）は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が開発した惑星探査機であり、初めて木星を探査した機体として知られています。この探査機は、1972年3月2日にフロリダ州のケープカナベラル空軍基地からアトラス・セントールロケットによって打ち上げられました。その後、1973年12月4日に木星に最接近し、木星とその衛星の画像を地球に送信しました。また、木星の強大な磁気圏やヴァン・アレン帯についても詳細な観測を行いました。

科学ミッションの延長

パイオニア10号の打ち上げ時には、信号受信の限度が太陽から木星までの距離の2倍と考えられていましたが、地上の設備の改良により、探査機からの信号は想定よりも遥かに遠くまで受信されました。この結果、パイオニア10号は、海王星軌道を越える1983年6月13日まで数多くの科学観測を継続しました。探査機との連絡は断続的に試みられ、約30年間にわたって信号が確認されました。そして、2003年1月23日をもって、最後の信号を受信しました。この時点でのパイオニア10号は海王星から約82.1天文単位（au）の距離にいたとされています。

探査機の設計

パイオニア10号は、六角形の形状を持つ探査機であり、全体をスピンさせることで安定性を確保しました。姿勢制御には3組のスラスターを使用し、直径2.74メートルの大型パラボラアンテナを地球に向けることができました。打ち上げ当初、探査機の質量は260キログラムで、そのうちの30キログラムは推進剤でした。また、外部の太陽光を利用することができなかったため、原子力電池（RTG）を4基搭載し、打ち上げ時に最大155Wの電力を供給しました。これにより、ミッションの最終段階でも約60Wの電力が確保されていました。

パイオニア・アノマリーとは

1980年には、パイオニア10号が理論的な予測よりもわずかに減速していることが発表され、これが「パイオニア・アノマリー」と名付けられました。この現象の背後には、外部からの未知の力や探査機内部の影響、分析手法の誤りなどいくつかの仮説が述べられましたが、最終的には2012年に探査機に備え付けられた原子力電池からの熱放射に偏りがあったことが原因であることが明らかになり、予期せぬ推進力が生まれていたと確定しました。

木星探査の成果

木星へ接近する段階では、探査機は1973年11月から写真撮影を開始し、最最接近までに500枚以上の画像を取得しています。1973年12月4日の最接近時には、木星から約20万キロメートルの距離で高精度の画像データを取得しました。

人類へのメッセージ

パイオニア10号の注目すべき点の一つは、地球外知的生命体への人類のメッセージを含む金属板が探査機に搭載されていたことです。この金属板には、宇宙に向けた重要な情報が描かれており、人類や太陽系の位置が示されています。これは、宇宙探査における象徴的な試みとしても評価されています。

パイオニア10号は、後にボイジャー1号にその座を譲るまで、地球から最も遠くに到達した人工物とされました。現在、パイオニア10号は53光年離れたアルデバランの方向へ移動を続けており、到達するには約170万年かかると予想されています。

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