パイパー カブ

J-3 カブ（Piper J-3 Cub）

J-3 カブは、アメリカのパイパー・エアクラフト社が製造した軽飛行機です。この機体は1930年代に初めて登場し、以後、20,000機以上が生産されるという大ヒットを記録しました。カブシリーズは、その高い操縦性と手頃な価格から当時の軽飛行機の象徴とも言える存在となりました。

概要と起源

J-3カブの起源は、1929年に設立されたテイラー・ブラザーズ・エアクラフト社にまで遡ります。ギルバート・テイラーと弟のゴードンが共同で設立したこの会社は、テイラー E-2 カブという機体を開発しました。高翼のタンデム複座機で、コスト効率を追求した製品でしたが、経営難により量産に至ることができませんでした。この状況を打破するため、ウィリアム・T・パイパーが資本を投入し、会社は再編成されました。

その後、37馬力のエンジンを搭載したカブが量産され、非常に良好な市場性能を示しました。1937年には、新たに設立されたパイパー・エアクラフト社によって生産が行われ、機体形状も進化したJ-2に移行しました。テイラー社とパイパー社は、これまでに約1,576機を製造しました。

J-3 カブの特色

J-3カブは、このシリーズの中でも特に有名で、設計技師ウォルター・ジャモウニューが手掛けました。特に胴体を広げることによって強力なエンジンを搭載可能になり、結果として垂直安定版も大型化しました。1937年に形式証明を取得し、翌年には737機が生産され、アメリカでは民間機の中で非常に広く普及しました。

J-3はエンジンの種類に応じてモデルが分かれ、J-3C（コンチネンタル製エンジン）、J-3F（フランクリン製エンジン）、J-3L（ライカミング製エンジン）などがあります。例えば、最も一般的だったJ-3C-65は、65馬力のエンジンを搭載していることを示しています。また、水上機型では形式名の末尾に「S」が追加されます。

特筆すべき業績

1938年5月には、特別な空中給油システムを装備したカブが、ニューヨークからマイアミまでの3,486kmを超える距離を往復飛行しました。また、同年11月には、あるJ-3が218時間23分間も空を飛び続けるという、軽飛行機の滞空時間記録を樹立しました。これを含む約20,043機が1947年までに生産され、現在も多くの機体が現役で使用されています。

派生型と軍用型

成功したJ-3カブに続いて、パイパー社はJ-4カブ・クーペやJ-5カブ・クルーザーといった派生型を開発しました。J-4は並列複座で、J-5は背面に2名を追加したモデルです。戦後も多くの派生型が登場し、それぞれ多くの愛好者に支持されています。

一方、軍用機としても広く活用され、第二次世界大戦中はアメリカ陸軍によってO-59という名称で観測機として採用されました。最終的には849機以上のO-59や4,461機のL-4シリーズが製造され、軍での運用実績も豊富です。

仕様（J-3C-65）

• - 全長: 6.78 m
• - 全幅: 10.73 m
• - 全高: 2.03 m
• - 翼面積: 16.54 m²
• - 空虚重量: 290 kg
• - 最大離陸重量: 499 kg
• - エンジン: コンチネンタル A65（65hp）
• - 最大速度: 148 km/h
• - 実用上昇限度: 3,660 m
• - 航続距離: 402 km
• - 乗員数: 2名

J-3カブの歴史は、軽飛行機の世界において一つの金字塔を築き上げており、これから先もその魅力は色褪せることがないでしょう。

もう一度検索