パウムガルトナー祭壇画

『パウムガルトナー祭壇画』は、ドイツ・ルネサンスを代表する画家アルブレヒト・デューラーが1502年から1504年にかけて制作した油彩の祭壇画です。この作品は、ニュルンベルクの名家パウムガルトナー家からの依頼で、聖カタリナ聖堂に寄進するために制作されました。

この祭壇画は、中央パネルと左右の翼パネルで構成されています。中央パネルには「キリストの降誕」が描かれており、荒廃した建物が背景にあります。前景には、聖母マリアが右側に、聖ヨセフが左側に、そして生まれたばかりのイエス・キリストが中央に横たわっています。この場面には、寄進者であるパウムガルトナー家の人々が小さく描かれており、聖母マリアの手前にはバルバラが2人の娘と共に跪いています。また、聖ヨセフの背後には、バルバラの最初の夫であるマルティン、2人の息子ルーカスとシュテファン、そしてバルバラの2番目の夫ハンス・シェーンバッハが描かれています。画面下部には、パウムガルトナー家の紋章が左右に見られます。

左右の翼パネルには、それぞれ「聖ゲオルギウス」と「聖エウスタキウス」が描かれています。これらの聖人は、パウムガルトナー家のシュテファンとルーカスがモデルとなっています。翼パネルは黒い背景に聖人が大きく描かれており、中央パネルとは異なる様式となっています。古文書によると、左右のパネルは中央パネルよりも古い1498年に制作されたとされており、この様式の違いは制作年代の差によるものと考えられています。

また、左右のパネルの外側には「受胎告知」の場面が描かれていましたが、これらは工房の作であり、現在では「大天使ガブリエル」の複製のみが現存しています。

この祭壇画は、1613年にバイエルン選帝侯マクシミリアン1世によって聖カタリナ聖堂から購入され、現在はミュンヘンのアルテ・ピナコテークに収蔵されています。

パウムガルトナー家の寄進の動機は、1498年に一家のシュテファンがエルサレムに巡礼したことにあるとされています。この巡礼を機に、シュテファンを含む4兄弟が亡き両親の追善のために祭壇画を依頼したと考えられています。この作品は、デューラーの初期の傑作の一つとして評価されており、その後の彼の芸術的な発展を示す上で重要な作品とされています。また、祭壇画に描かれた寄進者たちの肖像は、当時のニュルンベルクの名家の姿を知る上で貴重な資料となっています。

祭壇画の構成や人物描写、そして歴史的背景など、多くの側面から鑑賞することができる、非常に興味深い作品です。

中央パネル: キリスト降誕の場面。聖母マリア、聖ヨセフ、イエス・キリストを中心に、パウムガルトナー家の人々が描かれている。
左翼パネル: 聖ゲオルギウス。シュテファン・パウムガルトナーがモデル。
右翼パネル: 聖エウスタキウス。ルーカス・パウムガルトナーがモデル。
外側パネル: 受胎告知（工房作、一部現存）

この祭壇画は、デューラーの芸術的な才能だけでなく、当時の社会や宗教的な背景を映し出す鏡としても重要な役割を果たしています。

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