パウロ三木

パウロ三木（パウロ みき）は、安土桃山時代のキリシタンであり、日本における殉教者の第一人者として知られています。イエズス会の助修士（イルマン）として、その生涯を信仰に捧げました。洗礼名はパウロであり、当時の記録では「三木ポオロ」とも記されています。彼は死後、265年を経て日本二十六聖人の一人として、カトリック教会によって聖人に列せられました。

生涯

パウロ三木の出生地については諸説があり、摂津国（現在の兵庫県有馬郡）とする説が有力ですが、但馬国や阿波国徳島出身とする異説も存在します。彼の日本名については明らかになっていません。

父である三木判大夫は、三好三人衆に仕えた戦国武将で、後に織田信長に仕え、寵臣となったとされています。判大夫は1564年に洗礼を受け、パウロと名乗りました。その息子であるパウロ三木も、4、5歳の時に洗礼を受け、父と同じ洗礼名を与えられました。

1581年、12歳（ただし、生年との整合性には疑問が残る）の時、パウロ三木はオルガンティノ師の指導のもと、安土城下に設立された日本最初のセミナリヨ（小神学校）に第一期生として入学しました。2年後、本能寺の変によって安土城下が焼失したため、有馬（現在の高槻市）の学寮に移り、イエズス会員による教育を受け、幅広い知識を身につけました。

成績優秀だったパウロ三木は、父が九州平定の戦いで戦死したことを知ると、教会に身を捧げる決意を固めました。1586年、22歳の時にイエズス会への入会を許され、優れた弁論術を活かして多くの聴衆を魅了する修道士として活躍しました。彼の説教によってキリスト教に改宗する者も多く、書物を通じて仏教の誤りを指摘する活動も熱心に行いました。

1596年、サン＝フェリペ号事件を契機に、豊臣秀吉によるキリシタン弾圧が始まりました。宣教師やキリシタン信徒の名簿が作成され、監視されるようになります。同年12月11日、秀吉は奉行の石田三成に、フランシスコ会のキリシタンを捕縛し処刑するよう命じました。パウロ三木は、大阪にいたイエズス会宣教師宅で捕らえられました。三成はイエズス会派の者を処刑対象から除外するよう主張しましたが、秀吉はこれを認めませんでした。

捕らえられた26人は、フィリピン外交使節を装ってキリスト教を広めた罪で長崎で磔刑に処せられると宣告されました。証拠として耳の一部を切り取られた後、京都、大阪、堺の市中を引き回され、長崎へ陸路で送られました。1597年2月5日、長崎の西坂の丘で十字架に磔にされ、処刑されました。享年33歳でした。

ルイス・フロイスの記録によると、パウロ三木は十字架の上で、集まった群衆に向かって「私は罪状に記されているようなフィリピン人ではなく、れっきとした日本人である。私が殺されるのは、キリスト教を信じているためである。私はこの理由のために命を捧げることを厭わない。キリストの教えに従い、私を処刑した豊臣秀吉や、処刑に関わった全ての人々を許したい」と叫んだと伝えられています。

1627年、教皇ウルバヌス8世によって福者に列せられ、1862年には教皇ピウス9世によって聖人に列せられました。

今日、パウロ三木の名前は、聖イグナチオ教会の運営を委託されたイエズス会の聖三木図書館に、その名を残しています。

参考文献

大日本人名辞書刊行会 編『国立国会図書館デジタルコレクション 大日本人名辞書』 下巻（新版）、大日本人名辞書刊行会、1926年、2544-2545頁。
高柳光寿; 松平年一『戦国人名辞典』吉川弘文館、1981年、315頁。
松田毅一『近世初期日本関係南蛮史料の研究』風間書房、1967年。
玉木譲『日本二十六聖人　三木パウロ　殉教への道』弦書房、2024年7月22日。

関連項目

日本のキリシタン一覧
聖三木図書館
聖パウロ三木・カトリック徳島教会

外部リンク

聖三木図書館

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