セミナリヨ

セミナリヨとは

セミナリヨ（ポルトガル語: seminário）は、16世紀後半にイエズス会が日本に設立した、司祭や修道士を育成するための初等教育機関（小神学校）です。1580年から1614年までの約30年間、日本各地に存在しました。

歴史的背景

1579年、イエズス会の巡察師アレッサンドロ・ヴァリニャーノ神父が来日し、当時の日本における布教状況を調査しました。ヴァリニャーノは、日本人の司祭・修道士の育成が不可欠であると考え、それまで日本人育成に消極的だったフランシスコ・カブラル神父の方針を改めさせました。こうして、初等教育機関であるセミナリヨ、高等教育機関であるコレジオ、イエズス会員養成のためのノビチアートが設立されることになりました。

セミナリヨの設置場所は、当初京都が検討されましたが、仏教勢力からの反発を考慮し、織田信長の庇護のもと、安土（現在の滋賀県近江八幡市安土町）に建設されることになりました。信長は仏教勢力を快く思っておらず、キリスト教を保護することで対抗しようとしたため、セミナリヨ設立に協力的でした。1580年、安土にセミナリヨが完成しました。同時期に、九州の長崎県有馬にも同様のセミナリヨが設立されました。

安土のセミナリヨは、純和風の三階建て建築で、茶室も併設されていました。信長は屋根瓦に安土城と同じ青瓦の使用を命じ、イエズス会員たちはこれに感謝しました。責任者となったニェッキ・ソルディ・オルガンティノ神父は、高山右近の協力を得て入学者を募り、パウロ三木やアントニオ三箇など、後に殉教する者も入学しました。

安土のセミナリヨは、本能寺の変によって焼失し、その後、高槻に移転しましたが、1587年の豊臣秀吉の禁教令により九州へ移転することになりました。セミナリヨは、長崎、有馬、加津佐、天草などを転々としましたが、1614年の徳川家康の禁教令により閉鎖されました。生徒の中には潜伏して信仰を続けた者もいれば、海外に逃れて勉学を続けた者もいました。

セミナリヨで学んだ人々の中には、後にイエズス会員となり、厳しい迫害の中で殉教したり国外追放されたりした者も少なくありません。

教育内容

当時のヨーロッパでは人文主義と古典復興が盛んであり、セミナリヨの教育もその影響を受け、古典教育に力が入れられました。生徒たちは、カトリック教会の公用語であり学問の言語でもあったラテン語と、日本文学を学びました。イエズス会員たちは、日本での布教には日本文学の知識が不可欠と考え、平家物語などを教材として用いました。ルイス・フロイスは、セミナリヨの生徒たちのラテン語習得の速さに驚いたと記録しています。

また、音楽と体育も重視されました。音楽では、フルート、クラヴォ（チェンバロ）、オルガンなどの器楽演奏や、グレゴリオ聖歌や多声聖歌の練習が行われました。体育では、水泳が行われ、週末にはピクニックに出かけるなど、生徒たちの体力向上にも努めました。

復活祭やクリスマスには文化祭が開かれ、生徒たちが劇や歌、ラテン語の演説などを披露しました。

セミナリヨで行われた教育は、当時の日本にはなかった革新的なもので、近代教育の先駆けともいえます。明治以降、日本が導入した西洋式の教育システムはキリスト教の学校システムから発展したものであり、セミナリヨは近代日本の教育の原点の一つと考えることができるでしょう。

脚注

日本のキリシタン一覧
コレジオ
ノビシャド
ゼミナール（セミナー） - 語源が同じ（ラテン語のseminarium ）言葉。
* アレッサンドロ・ヴァリニャーノ

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