パオ民族解放軍
パオ民族解放軍（PNLA）は、ミャンマーにおけるパオ族の主要な武装組織であり、その政治部門であるパオ民族解放機構（PNLO）の軍事部門としての役割を担っています。パオ族の民族運動は、1940年代後半にタトンでパオ民族機構（PNO）が設立されたことに始まります。
1946年から1947年にかけて、タトンでパオ民族組織が設立され、これがパオ族武装闘争の端緒となりました。1948年、パオ族固有の呼称「パオ」を公的に認めるよう求めるデモが実施され、民族的アイデンティティの確立に向けた動きが見られました。1949年には、カレン族反乱軍がタウンジーを占領した際に多くのパオ族がこれに加わりましたが、政府軍による鎮圧後、投降した指導者の一部が処刑されるなどしたため、中央政府への深い不信感を抱くこととなりました。
1950年、反乱に参加していたウー・フラペは、カレン民族同盟（KNU）の議長就任要請を辞退し、パオ族の運動に専念しました。同年8月には統一パオ民族主義者機構（UPNO）が結成され、反ツァオパー（シャン族の封建領主）運動の中心となり、武装勢力として勢力を拡大しました。UPNOは議会にも進出し、政治活動も展開しましたが、指導層の内紛や住民への過重な徴税など、課題も抱えていました。1958年、「武器は民主主義のために」との政府の呼びかけに応じ、ウー・フラペ率いる多数のUPNO兵士が投降しました。翌年にはツァオパー制度が廃止され、反ツァオパー闘争は一定の成果を見ました。
1962年の軍事クーデター後、多くのパオ族指導者が投獄される中、ボー・サンテインは1958年に投降した部隊を再結集し、山中でパオ民族解放機構（PNLO）（現在のPNLOとは異なる初期の組織）を結成して抵抗を続けました。しかし、シャン州の他の武装勢力との対立により、ボー・サンテインは1968年に殺害されました。その後、組織はシャン州諸民族解放機構（SSNLO）と改称され、タ・カレイの指導下で積極的なゲリラ活動を展開しました。1970年代に入ると、SSNLO内部で共産主義思想が台頭し、民族主義を掲げるウー・フラペら解放された指導者との間に亀裂が生じました。この対立は決定的となり、SSNLOはシャン州諸民族人民解放機構（SSNPLO、通称：赤パオ）となりビルマ共産党（CPB）と連携を深める一方、ウー・フラペらは民族主義派を結集し、シャン州諸民族解放戦線（SSNLF）、後のパオ民族機構（PNO、通称：白パオ）を結成しました。以降、赤パオと白パオは激しく対立し、衝突を繰り返しました。
1989年のCPB崩壊後、PNOとSSNPLOの間に和解の試みがありましたが、長年の確執から再統合は実現しませんでした。PNOは国境拠点と収入源を失ったこともあり、軍事政権との停戦を選択し、1991年に合意に至りました。これにより、PNOの支配地域はシャン州第6特区として一定の自治を認められました。しかし、この停戦に反対する一部勢力はパオ人民解放機構（PPLO）を結成して抵抗を続けました。1994年にはSSNPLOも軍事政権と停戦合意を締結しました。
SSNPLOはその後分裂を経て、2007年には一部が軍事政権に投降しましたが、クン・トゥレイン率いるグループがタイ国境周辺でPNLO（新生）を再結成し、抵抗を継続しました。
2009年12月、クン・オカー率いるPPLOとクン・ティソン率いるPNLO（新生）が合併し、現在のパオ民族解放軍（PNLA）とその政治組織であるパオ民族解放機構（PNLO）が設立されました。2015年には、PNLOは全国停戦合意（NCA）に署名し、和平プロセスに参加しました。
しかし、2021年のクーデター以降、ミャンマーの情勢は再び緊迫化しました。2024年1月、PNLAは軍事政権およびその傘下のパオ民族軍（PNA）との衝突を開始し、シーセンの町を攻撃しました。これを受け、PNLOは同年1月26日にNCAからの撤回を正式に表明し、軍事政権の打倒と連邦民主主義体制の樹立を目指す国民統一政府（NUG）への支持を明らかにしました。また、PNA兵士に対して、攻撃を行わないことを条件に離反を促しました。この過程で、PNLO内部では指導者間の意見の相違が表面化し、クン・オカーがPNLOを離れて一部勢力を率いる動きも見られましたが、大多数の兵士はクン・トゥレイン率いる主流派に留まるとされています。
PNLAは主にシャン州南部のパオ自治区（ホーポン、シーセン、ピンラウン各郡区）および周辺地域で活動しており、2024年の武力衝突再開以降、これらの地域の大部分に部隊を駐留させています。
2012年8月25日、PNLOはミャンマー政府との間で州レベル（5項目）および連邦レベル（8項目）の停戦・和平構築に関する合意に署名しました。これには、停戦の実施、部隊の駐留区域、連絡事務所の設置、麻薬対策への協力、兵士の処遇に関する協議などが含まれていました。この合意は、その後の全国停戦合意に向けた重要な一歩でした。
黎明期と反乱への参加
1946年から1947年にかけて、タトンでパオ民族組織が設立され、これがパオ族武装闘争の端緒となりました。1948年、パオ族固有の呼称「パオ」を公的に認めるよう求めるデモが実施され、民族的アイデンティティの確立に向けた動きが見られました。1949年には、カレン族反乱軍がタウンジーを占領した際に多くのパオ族がこれに加わりましたが、政府軍による鎮圧後、投降した指導者の一部が処刑されるなどしたため、中央政府への深い不信感を抱くこととなりました。
UPNOの結成と民族運動の分裂
1950年、反乱に参加していたウー・フラペは、カレン民族同盟（KNU）の議長就任要請を辞退し、パオ族の運動に専念しました。同年8月には統一パオ民族主義者機構（UPNO）が結成され、反ツァオパー（シャン族の封建領主）運動の中心となり、武装勢力として勢力を拡大しました。UPNOは議会にも進出し、政治活動も展開しましたが、指導層の内紛や住民への過重な徴税など、課題も抱えていました。1958年、「武器は民主主義のために」との政府の呼びかけに応じ、ウー・フラペ率いる多数のUPNO兵士が投降しました。翌年にはツァオパー制度が廃止され、反ツァオパー闘争は一定の成果を見ました。
クーデター後の抵抗と組織再編
1962年の軍事クーデター後、多くのパオ族指導者が投獄される中、ボー・サンテインは1958年に投降した部隊を再結集し、山中でパオ民族解放機構（PNLO）（現在のPNLOとは異なる初期の組織）を結成して抵抗を続けました。しかし、シャン州の他の武装勢力との対立により、ボー・サンテインは1968年に殺害されました。その後、組織はシャン州諸民族解放機構（SSNLO）と改称され、タ・カレイの指導下で積極的なゲリラ活動を展開しました。1970年代に入ると、SSNLO内部で共産主義思想が台頭し、民族主義を掲げるウー・フラペら解放された指導者との間に亀裂が生じました。この対立は決定的となり、SSNLOはシャン州諸民族人民解放機構（SSNPLO、通称：赤パオ）となりビルマ共産党（CPB）と連携を深める一方、ウー・フラペらは民族主義派を結集し、シャン州諸民族解放戦線（SSNLF）、後のパオ民族機構（PNO、通称：白パオ）を結成しました。以降、赤パオと白パオは激しく対立し、衝突を繰り返しました。
停戦と再びの武力闘争
1989年のCPB崩壊後、PNOとSSNPLOの間に和解の試みがありましたが、長年の確執から再統合は実現しませんでした。PNOは国境拠点と収入源を失ったこともあり、軍事政権との停戦を選択し、1991年に合意に至りました。これにより、PNOの支配地域はシャン州第6特区として一定の自治を認められました。しかし、この停戦に反対する一部勢力はパオ人民解放機構（PPLO）を結成して抵抗を続けました。1994年にはSSNPLOも軍事政権と停戦合意を締結しました。
SSNPLOはその後分裂を経て、2007年には一部が軍事政権に投降しましたが、クン・トゥレイン率いるグループがタイ国境周辺でPNLO（新生）を再結成し、抵抗を継続しました。
新生PNLA/PNLOの結成と近年の動向
2009年12月、クン・オカー率いるPPLOとクン・ティソン率いるPNLO（新生）が合併し、現在のパオ民族解放軍（PNLA）とその政治組織であるパオ民族解放機構（PNLO）が設立されました。2015年には、PNLOは全国停戦合意（NCA）に署名し、和平プロセスに参加しました。
しかし、2021年のクーデター以降、ミャンマーの情勢は再び緊迫化しました。2024年1月、PNLAは軍事政権およびその傘下のパオ民族軍（PNA）との衝突を開始し、シーセンの町を攻撃しました。これを受け、PNLOは同年1月26日にNCAからの撤回を正式に表明し、軍事政権の打倒と連邦民主主義体制の樹立を目指す国民統一政府（NUG）への支持を明らかにしました。また、PNA兵士に対して、攻撃を行わないことを条件に離反を促しました。この過程で、PNLO内部では指導者間の意見の相違が表面化し、クン・オカーがPNLOを離れて一部勢力を率いる動きも見られましたが、大多数の兵士はクン・トゥレイン率いる主流派に留まるとされています。
PNLAは主にシャン州南部のパオ自治区（ホーポン、シーセン、ピンラウン各郡区）および周辺地域で活動しており、2024年の武力衝突再開以降、これらの地域の大部分に部隊を駐留させています。
過去の停戦合意（2012年）
2012年8月25日、PNLOはミャンマー政府との間で州レベル（5項目）および連邦レベル（8項目）の停戦・和平構築に関する合意に署名しました。これには、停戦の実施、部隊の駐留区域、連絡事務所の設置、麻薬対策への協力、兵士の処遇に関する協議などが含まれていました。この合意は、その後の全国停戦合意に向けた重要な一歩でした。
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