パスカル・ボニゼール

パスカル・ボニゼール：フランス映画界の多才な巨匠

パスカル・ボニゼール (1946年生まれ) は、フランスを代表する映画監督、脚本家、映画批評家、そして俳優として知られる、まさに映画界の多才な巨匠です。フランス国立映像音響芸術学院(La Fémis) の教授も務める彼は、その幅広い活動を通してフランス映画界に多大な影響を与え続けています。

映画批評家としての出発と脚本家としての成功

若きボニゼールは、名高い映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』誌のコラムニストとして活躍しました。数年に渡り執筆活動を行い、独自の視点と鋭い批評眼で知られました。その経験は、後の彼の脚本家、そして監督としての活動に大きな影響を与えたことは間違いありません。

ボニゼールは、脚本家として多くの作品を手掛け、その才能は早くから認められていました。1976年、ルネ・アリオ監督の『私、ピエール・リヴィエールは母と妹と弟を殺害した』で共同脚本として参加したことが、彼の脚本家としてのキャリアの始まりです。

その後、ジャック・リヴェットやアンドレ・テシネといったフランス映画界の巨匠たちと数々の作品で協働。彼の脚本は、これらの監督の作品に深みと複雑さを与え、彼らの独特なスタイルをさらに際立たせました。代表的な作品には、『ブロンテ姉妹』『地に堕ちた愛』『嵐が丘』『美しき諍い女』など多くの傑作が挙げられます。これらの作品への貢献は、ボニゼールの脚本家としての高い評価を確固たるものにしました。

遅咲きの映画監督としての成功

監督としては比較的遅く、1989年に短編映画『Les Sirènes』でデビューを果たしました。しかし、1996年の長編映画デビュー作『アンコール』で、彼はジャン・ヴィゴ賞を受賞。この受賞は、彼の監督としての才能を証明するものとなり、遅咲きの成功という言葉を最もよく体現する例と言えるでしょう。その後も、『ロベールとは無関係』『かすり傷』『華麗なるアリバイ』など、独自の視点と洗練された演出で多くの作品を発表し続けています。

アカデミックな視点とユーモア

ボニゼールは、単なる映画作家ではありません。彼は哲学修士号を持つ知性派であり、その作品にはアカデミックな視点が織り込まれています。しかし、彼の作品は決して重苦しいものではなく、独特のユーモアと知的な機知に富んでいます。彼は『カイエ・デュ・シネマ』誌で培った論理的思考と、鋭い洞察力を活かし、独自のスタイルを確立しました。ある批評家は、彼の作品にジャンセニスト的側面においてのエリック・ロメール、ジャック・タチ、そしてカフカ的な要素を見出しています。これら多様な要素が複雑に絡み合い、ボニゼールの独特の世界観を作り出しています。

家族の系譜と女優としての娘

ボニゼールには、監督ソフィー・フィリエールとの間に生まれた娘、アガト・ボニゼールがいます。アガトもまた女優として活躍しており、父親の作品にも出演。セザール賞にもノミネートされるなど、将来を嘱望される若手女優として注目を集めています。

フランス映画界への貢献と今後の展望

パスカル・ボニゼールは、脚本家、監督、批評家、俳優として、多方面で才能を発揮し、フランス映画界に計り知れない貢献をしてきました。彼の作品は、その知的でユーモラスな作風から、世界中の映画ファンを魅了し続けています。フランス映画界の巨匠として、今後も彼の活動から目が離せません。彼の今後の作品にも期待が高まります。

フィルモグラフィー

監督作品

1989年：『Les Sirènes』(短編)
1996年：『アンコール』(Encore)
1999年：『ロベールとは無関係』(Rien sur Robert)
2003年：『かすり傷』(Petites coupures)
2006年：『Je pense à vous』
2008年：『華麗なるアリバイ』(Le Grand alibi)
2012年：『Cherchez Hortense』
2016年：『Tout de suite maintenant』

主な脚本作品 (一部抜粋)

『ブロンテ姉妹』(監督：アンドレ・テシネ)
『転落したペテン師たち』(監督：バルベ・シュレデール)
『地に堕ちた愛』(監督：ジャック・リヴェット)
『嵐が丘』(監督：ジャック・リヴェット)
『夜を殺した女』(監督：アンドレ・テシネ)
『美しき諍い女』(監督：ジャック・リヴェット)
『私の好きな季節』(監督：アンドレ・テシネ)
『三つの人生とたった一つの死』(監督：ラウル・ルイス)
『恋ごころ』(監督：ジャック・リヴェット)
『ジェーン・バーキンのサーカス・ストーリー 36 vues du pic Saint-Loup』(監督：ジャック・リヴェット)
『ボヴァリー夫人とパン屋』(監督：アンヌ・フォンテーヌ)
『白雪姫〜あなたが知らないグリム童話〜』(監督：アンヌ・フォンテーヌ)

もう一度検索