パゼッヘ族

パゼッヘ族：台湾原住民の豊かな歴史と文化

パゼッヘ族は、台湾原住民を構成するグループの一つであり、平埔族に分類されます。かつては台中市豊原区や神岡周辺の内陸部を主な居住地としていましたが、現在では南投県埔里と苗栗県三義郷鯉魚潭村に多くが居住しています。

16世紀には、岸裡社、烏牛欄社、朴仔籬社、阿里史社といった複数の集落を形成し、独自の社会と文化を築き上げていました。1699年には、岸裡社が清朝の支配下に入り、呑霄社の反乱鎮圧に協力したという歴史的な記録も残っています。この出来事は、パゼッヘ族が周辺勢力との複雑な関係性を築いていたことを示唆しています。

パゼッヘ族は、豊原の東側に居住していたパゼッヘ本族と、西側に居住していたカハブ族（噶哈巫または朴仔籬）の二つのグループに大別されます。両グループの言語や文化には共通点が多く、かつては同一民族として扱われることもありました。しかし近年では、カハブ族は独自の民族として活動を展開しており、それぞれのアイデンティティが尊重されています。

パゼッヘ族は独自の言語であるパゼッヘ語を有しています。彼らの生活は、米作を中心とした農業に支えられていました。加えて、狩猟や漁業、採集も生活の重要な一部を担っていました。社会組織は、男子会所制度と年齢階級を備えた母系社会という独特のシステムを持っていました。これは、女性の社会的地位が高く、血縁関係が社会構造に大きな影響を与えていたことを示しています。

近年では、平埔族の正名運動の高まりを受け、パゼッヘ族の文化や言語の復興運動が盛んに行われています。埔里鎮と三義郷では、伝統的な文化や言語の継承と発展に向けた様々な取り組みが行われ、パゼッヘ族のアイデンティティの再確認と強化が図られています。これらの活動は、失われつつあった文化遺産の保護と、未来世代への継承という重要な役割を担っています。

パゼッヘ族の歴史と文化は、台湾原住民の歴史を理解する上で欠かせない要素です。彼らの独自の言語、社会構造、そして近年の復興運動は、台湾社会の多様性と豊かさを象徴するものです。今後も、パゼッヘ族の文化が大切に保護され、発展していくことが期待されます。

関連事項

パゼッヘ語
平埔族
中央研究院平埔文化資訊網
中央研究院南島語デジタルアーカイブ
* 中央研究院語言学研究所

もう一度検索