パラトルモン

パラトルモン（Parathormone）

パラトルモンは、副甲状腺から分泌されるポリペプチドホルモンで、84のアミノ酸から構成されています。一般的には副甲状腺ホルモン（PTH）や上皮小体ホルモンとも呼ばれます。このホルモンは、血液中のカルシウム濃度を上昇させる作用を持ちます。パラトルモンと相対するホルモンには甲状腺から分泌されるカルシトニンがあり、これは逆に血中カルシウムの濃度を低下させる働きをします。

パラトルモンの機能

パラトルモンは、血中カルシウム濃度を高める主要な役割を担っており、その影響を受ける受容体が骨、腸、腎臓の3つの臓器に存在します。具体的には、腎臓の尿細管でリンの吸収を抑制し、リンが尿中に排出されやすくなります。また腸管や骨からはそれぞれ、リンとカルシウムの吸収と放出が促進されます。特に活性型ビタミンD3の影響を受け、腸管でのカルシウムとリンの吸収が促進される点が重要です。

さらに、血液中のカルシウム濃度が上昇すると、副甲状腺のカルシウム受容体が反応し、パラトルモンの分泌が抑制されるフィードバック機構も存在します。これにより、カルシウム濃度が安定に保たれます。

疾患との関連

パラトルモンに関わる疾患には、「副甲状腺機能亢進症」と「副甲状腺機能低下症」の2種類があります。前者はパラトルモンが過剰に分泌されることが原因であり、原発性と二次性に分類されます。原発性は副甲状腺自体の異常（例えば副甲状腺腺腫や過形成、副甲状腺癌）によって引き起こされ、一方、二次性は慢性腎不全に関連しています。

逆に副甲状腺機能低下症は、パラトルモンが不足することが原因で、自己免疫疾患や先天性の代謝異常が主な要因とされています。

副甲状腺ホルモン関連ペプチド

パラトルモンに似た構造を持つ蛋白質に副甲状腺ホルモン関連ペプチド（PTHrP）があります。このペプチドは、141個のアミノ酸から成り立っており、パラトルモンと似た生物作用を示します。特に悪性腫瘍によりPTHrPが大量に分泌されると、高カルシウム血症の症状を引き起こすことがあります。実際、悪性腫瘍による高カルシウム血症の80％以上はPTHrPに起因しています。

骨粗鬆症治療への応用

パラトルモンの一部は、骨粗鬆症の治療薬として利用されています。具体的には、全長の84アミノ酸のうち、最初の34アミノ酸（1-34）がテリパラチドという名称で使用されています。従来の骨粗鬆症治療薬が主に骨吸収を抑える働きを持つのに対し、テリパラチドは骨形成を促進する特徴があります。この薬剤は通常、1日1回または週1回の投与が行われ、骨折リスクを低下させる効果が期待されています。

このように、パラトルモンは体内のカルシウムバランスに深く関与しており、さまざまな疾患とも関連している重要なホルモンです。

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