パリの通り、雨

パリの通り、雨（ギュスターヴ・カイユボット）

ギュスターヴ・カイユボットが1877年に制作した油彩画『パリの通り、雨』は、印象派の革新性と伝統的なアカデミズム絵画の要素を併せ持つ、彼の代表作の一つです。

概要

この作品は、パリの街を闊歩するブルジョワ階級の人々の姿を捉えたものです。舞台はサン・ラザール駅近く、ジョルジュ・オスマンによるパリ改造で新たに道路が整備された地域。カイユボット自身もこの界隈で生まれ育ち、細く曲がりくねった路地から、広々とした街路へと変貌していくパリの姿を目の当たりにしていました。

登場人物たちは皆、当時の最新ファッションに身を包んでいます。ほぼ等身大で描かれたその姿は、鑑賞者に強い存在感を与えます。完成度の高い表面の仕上げ、厳密な遠近法、そして大きなスケールは、当時のサロン・ド・パリを席巻していた伝統的なアカデミズム絵画を好む人々にも受け入れられやすい要素でした。

しかし、この作品の魅力はそれだけではありません。非対称の構図、大胆な画面の切り取り方、雨の日の独特な雰囲気、そして何よりも同時代のパリの風景を描いた現代的な主題は、従来の絵画には見られない革新性を示しています。

印象派グループ展への出品

『パリの通り、雨』は、1877年の第3回印象派グループ展に出品されました。カイユボットは、前年の第2回展直後からこの作品の制作に取り掛かっていたと考えられています。同じ展示室には、本作と同じく「ヨーロッパ地区」を描いた『ヨーロッパ橋』や、クロード・モネの「サン・ラザール駅」連作も展示され、場所的に関連性の高い作品が並びました。しかし、モネの作品が大胆な筆致による印象主義的な表現であるのに対し、カイユボットの作品は写実的で完成度の高い仕上げが施されており、画風としては異質であったと言えるでしょう。

来歴

1894年にカイユボットが亡くなると、作品は弟のマルシャル・カイユボットら遺族に相続されました。その後、1954年にニューヨークのウォルター・P・クライスラー・ジュニアの手に渡り、1964年にはウィルデンシュタイン社が購入。同年、シカゴ美術館が取得し、現在に至ります。

『パリの通り、雨』は、印象派の時代における都市の変貌と、そこに生きる人々の姿を鮮やかに描き出した作品として、今日も多くの人々を魅了し続けています。

参考文献

• - 島田紀夫『印象派の挑戦――モネ、ルノワール、ドガたちの友情と闘い』小学館、2009年。ISBN 978-4-09-682021-6

外部リンク

• - パリの通り、雨（パリの街角、雨）(Salvastyle.com)

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