パルド・プッシュ

パルド・プッシュ（Pardo's Push）

パルド・プッシュは、航空機の独特なマニューバで、主に1967年3月10日にアメリカ空軍のジョン・R・“ボブ”・パルド大尉によって実施された出来事に由来します。このマニューバは、被弾した僚機を自機で押し、安全な空域に移動させるという目的で行われました。

簡単な背景

1967年3月、アメリカ空軍第8戦術戦闘飛行隊のボブ・パルド大尉とその僚機のアール・エイメン大尉は、北ベトナムにある製鉄所を攻撃するため、タイのウボン基地から出撃していました。彼らは作戦中に敵の対空砲火に被弾し、特にエイメン大尉のF-4C戦闘機は燃料タンクが損傷する重傷を負いました。

緊急の決断

エイメン大尉の機体は急速に燃料が漏れ、空中給油機までの到達が不可能な状況に陥りました。地上に降りると、敵の地対空ミサイルに対して無防備だったため、パルド大尉はエイメン大尉機を自機で押すことを決意しました。最初はドラッグシュート収納部を利用しようとしましたが、乱流の影響でうまくいきませんでした。

アレスティング・フックの活用

そこでパルド大尉は、F-4の空母運用のために装備されたアレスティング・フックを利用しました。エイメン大尉が自機のフックを下ろし、パルド大尉は自らの機体をフックの先端に接近させました。この時、エイメン大尉はエンジンを停止させ、降下率を改善したものの、あえなくフックが外れてしまいました。しかし、パルド大尉は何度も機体を移動させつつ、約88マイルにわたりエイメン大尉機を押し続けました。

危機の解決

ついに、高度6,000フィートに到達し、エイメン大尉とその乗組員は脱出。彼らは救助ヘリによって救出され、捕虜になることを免れました。この行動について、パルド大尉は当初懲戒されましたが、後に1990年に軍は彼の行動を評価し、シルバースターを授与しました。

その後のキャリアと友情

事件後も二人は共に空軍でのキャリアを重ね、それぞれ中佐として退役しました。パルド大尉はエイメン大尉が筋萎縮性側索硬化症を患ったことを知り、「アール・エイメン財団」を設立し、彼の支援を行いました。この財団と協力して、エイメン元中佐が亡くなるまで使用されるバンの調達も行いました。

ドラマでの影響

パルド・プッシュのエピソードは、テレビドラマ「犯罪捜査官ネイビーファイル」（原題:JAG）で描かれることにもなり、当該エピソードではパルド大尉の勇気が称賛されました。

最後に

パルド元中佐は2023年12月5日に89歳で亡くなりましたが、彼の勇気と創意は今も多くの人々に語り継がれています。

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