パンデュールI

パンデュールI：多用途な6輪装甲兵員輸送車

パンデュールIは、オーストリアのシュタイアー・ダイムラー・プフ社によって設計された6輪式の装甲兵員輸送車です。当初は単に「パンデュール」と呼ばれていましたが、後に改良型のパンデュールIIが登場したため、区別するために現在の名称となりました。

開発の経緯と特徴

1980年代、シュタイアー社は軍からの発注がない状態で、独自のプライベートベンチャーとしてパンデュールの開発を進めました。その設計思想として、モジュラー構造が採用されており、これにより様々な派生型を容易に生産できるという特徴を持っています。

車体は、エンジンが前面右側に搭載され、運転席が左側に配置されています。兵員区画の屋根が運転席部分よりも一段高くなっており、運転席のすぐ後ろには機関銃ターレットが配置されている点が、同じ6輪式のフクスやXA-180とは異なります。

多彩な派生型

パンデュールIには、様々な派生型が存在します。

モデルA：車体中央部から後部にかけて屋根が高くなっているタイプで、装甲兵員輸送車、装甲救急車、対戦車車両、回収・修理車両、指揮通信車などが存在します。
モデルB：屋根の高さが一定のタイプで、水陸両用車（車体背面下部にウォータージェットを2基装備）、自走迫撃砲、戦闘偵察車などが存在します。戦闘偵察車は、兵員搭乗区画の屋根に砲塔を搭載可能で、20mm機関砲から90mm低圧砲まで、様々な兵装を運用できます。
LKOV ヴァルク：スロベニアでライセンス生産された型で、装甲兵員輸送車（乗員3名+兵員6名、12.7mm重機関銃またはH&K GMWを装備）、装甲救急車（乗員2名+負傷兵4～6名、武装なし）、自走迫撃砲（乗員2名+砲操作要員2名、ソルタム・システムズ製120mm自走迫撃砲システムCardomを搭載）、装甲偵察車（乗員3名、M242 ブッシュマスターと同軸7.62mm機関銃をラファエル社製OWS-25に搭載、必要に応じてBGM-71 TOW対戦車ミサイルも装備可能）などがあります。

パンデュールII

パンデュールIの後継として開発されたパンデュールIIは、6輪式と8輪式のバリエーションが存在します。

各国での採用

パンデュールIは、以下の国々で採用されています。

オーストリア：71両を1996年に受領。2023年時点で、71両のパンデュールと50両のパンデュールEVOを保有しています。
ベルギー：60両をライセンス生産で受領
ガボン：20両を受領
クウェート：70両を受領
ソロモン諸島：ソロモン諸島警察隊が治安任務用に装備
スロベニア：LKOV ヴァルクとして85両をライセンス生産
アメリカ合衆国：アメリカ陸軍特殊作戦コマンドがArmored Ground Mobility System (AGMS)として50両を受領
ウクライナ：スロベニアから20両供与

パンデュールIは、そのモジュール性と多様な派生型により、各国のニーズに合わせた運用が可能な装甲兵員輸送車として、幅広く活躍しています。

関連項目

装輪装甲車
* 装甲兵員輸送車

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