パンドラ (衛星)

パンドラの発見と命名

パンドラは、1980年10月中旬にボイジャー1号が撮影した写真の中から、コリンズらによって発見されました。発見当初はS/1980 S 27という仮符号が与えられていましたが、その後1986年1月3日にギリシア神話に登場する女性、パンドラにちなんで命名され、Saturn XVIIという確定番号が与えられました。パンドラの外側を公転する衛星には、彼女の夫であるエピメテウスの名前が付けられています。

パンドラの物理的特徴

パンドラの詳細な姿が明らかになったのは、2005年に土星探査機カッシーニによる接近観測によるものです。パンドラは、自己を球形に保つほどの重力を持たないため、非常に歪な形をしています。三軸径は104×81×64 kmの楕円体で近似されます。表面には直径30kmのクレーターが2つ存在し、近くを公転するプロメテウスよりもクレーターが多いことが特徴です。クレーターの多くは浅く、これは表面が細微な氷の塵で覆われているためと考えられています。また、表面には尾根や溝といった地形も見られます。

パンドラの平均密度は約0.5 g/cm³と非常に低く、アルベドが比較的高いことから、内部に間隙を多く含んだ氷の天体であると考えられています。ただし、これらの値には不確実性も残されています。他の多くの土星の衛星と同様に、パンドラの自転周期と公転周期は、土星からの潮汐力によって同期しています。

F環および他の衛星との関係

パンドラは、かつてF環の外側の羊飼い衛星であると考えられていました。しかし近年の研究では、F環の形成と維持にはパンドラは関与しておらず、その役割はプロメテウスのみが担っていることが示唆されています。

パンドラの軌道は、プロメテウスとの118:121平均運動共鳴の影響でカオス的な状態にあると考えられています。パンドラとプロメテウスの軌道の変化は、パンドラの近点がプロメテウスの遠点と一直線に並ぶ、およそ6.2年ごとに最も顕著になります。この時、両衛星はおよそ1400 km以内の距離にまで接近します。また、パンドラは外側を公転するミマスと3:2の平均運動共鳴を起こしており、公転周期の比は2:3となっています。

出典

* ザ・ナインプラネッツ 日本語版（パンドラ）

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