パヴァーヌ (フォーレ)

ガブリエル・フォーレ：パヴァーヌ Op.50

ガブリエル・フォーレ作曲の『パヴァーヌ』作品50は、彼の作品の中でも特に人気が高く、美しい旋律と洗練された構成で知られています。演奏時間はおよそ6分から7分。

概要

『パヴァーヌ』は、1886年に管弦楽曲として作曲され、翌1887年にロベール・ド・モンテスキューの詩による合唱パートが追加されました。管弦楽のみで演奏されることも多く、『レクイエム』と並び、フォーレの中期を代表する傑作として位置づけられています。

フォーレならではの甘美で崇高、そして清楚な旋律美は、聴く人の心を捉えて離しません。管弦楽版の他に、フォーレ自身が演奏したピアノ編曲版の録音やピアノロールも現存しています。また、独奏用や様々な楽器編成への編曲も行われ、ポピュラー音楽のソロ・ボーカル曲としても親しまれています。さらに、劇付随音楽『マスクとベルガマスク』の終曲（第8曲）にも使用されています。

編成

『パヴァーヌ』の管弦楽版は、比較的小規模な編成で構成されています。

フルート2
オーボエ2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン2
弦五部
* 混声四部合唱（省略可能）

打楽器は使用されず、金管楽器もホルンのみという編成は、楽曲の冒頭部分で室内楽的な響きを生み出しています。フォーレの他の管弦楽作品と同様に、木管楽器、特にフルートが重要な役割を果たしています。

曲の構成

楽曲は嬰ヘ短調、4/4拍子で、速度表示はAllegretto molto moderatoです。全体としてはA-B-A'-Codaの三部形式と見なせますが、詳細にはa-b-a-c（中間部、Bに相当）-b-a-b'-Codaとロンド形式の要素も含まれています。

まず、弦楽器の分散和音によるピッツィカートに乗せて、フルートが符点リズムを伴った優雅な旋律（a部、ロンド主題に相当）を奏でます。その後、新たな楽想（b部）が挿入され、木管楽器、ヴァイオリン、そして合唱によって旋律が受け継がれていきます。そして、やや劇的な中間部（c部）へと移行します。

中間部では、弦楽器の旋法的な下降音型と対旋律、管楽器の持続音を背景に、ホルンのソロと合唱が絡み合い、前後との鮮やかな対比を見せます。最初に提示された楽句が2度繰り返された後、全音ずつ主音が下げられ（D-D-C-B♭）、イ長調から和声を変えたb部へと展開します。

オーボエが冒頭の主題を奏でますが、新たな対旋律が加えられ、クライマックスを迎えます。続くb部では、旋律が主調に移調され、短縮されます。コーダではa部の素材が展開され、最後は管楽器による嬰ヘ短調の和音が響き渡る中、弦楽器のピッツィカートが静かに曲を閉じます。

『パヴァーヌ』は、その美しい旋律と洗練された構成によって、時代を超えて多くの人々に愛され続けている作品です。

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