パヴリク・モロゾフ

パヴリク・モロゾフ：プロパガンダが生んだ英雄

パヴリク・モロゾフ（1918年 - 1932年）は、ソ連で英雄として祭り上げられた少年です。彼は、父親を告発したことで知られ、その後の彼の生涯は、ソ連のプロパガンダと社会情勢に翻弄されました。

生涯

パヴリクは、ウラル山脈の東にある貧しい村で生まれ育ちました。彼の父親トロフィームは、村のソヴィエト議長でしたが、愛人を作り家庭を捨てました。パヴリクは、精神を病んだ母親の世話をしながら、学校ではアジテーターとして活動しました。

1931年、パヴリクは父親が偽造証明書を販売していたことを当局に密告しました。父親は逮捕され、流刑に処されました。裁判後、パヴリクは他の村人の密告も始めましたが、1932年、弟と共に殺害されました。

死後

パヴリクの死は、ソ連当局によって大々的に宣伝され、彼は肉親よりも社会正義を選んだ英雄として美化されました。彼の物語は、小説、映画、教科書などで広く紹介され、同世代の子供達に大きな影響を与えました。

しかし、近年では、パヴリクの密告が父親の逮捕の決定的な要因ではなかったという説や、彼の死の真相についても様々な議論があります。

議論と真実

パヴリク・モロゾフの物語は、ソ連のプロパガンダの象徴として、多くの議論を呼んでいます。彼は本当に英雄だったのか、それとも体制に利用された犠牲者だったのか？彼の生涯と死は、社会と家族、そして個人の関係について、私たちに問いかけます。

彼の父親が逮捕されたのは、パヴリクの密告が決め手ではなく、当局が村内を捜索した際に物的証拠が出てきてトロフィームから購入したと自供したことが決定的だったと言われています。事件の真相は未だ謎に包まれています。

セルゲイ・エイゼンシュテイン監督は、パヴリクの事件を題材にした映画「ベージン草原」を製作しましたが、父子対立が強調されていたために批判され、製作中止となりました。フィルムは大部分が消失し、幻の作品となっています。

まとめ

パヴリク・モロゾフは、ソ連のプロパガンダによって英雄に祭り上げられた少年ですが、彼の生涯は、社会情勢に翻弄された悲劇的なものでした。彼の物語は、私たちに、歴史の真実とプロパガンダの危険性について考えさせます。

参考文献
亀山郁夫著 『大審問官スターリン』 小学館 2006年 ISBN 4093875278
オーランドー・ファイジズ著　『囁きと密告　スターリン時代の家族の歴史』（上・下） 染谷徹訳　　白水社

外部リンク
* Soviet Hero Pavlik Morozov Still Mysterious

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