パームボール

パームボールとは

パームボール（英: palmball）は、野球における独特な変化球の一つで、一般には単に「パーム」とも呼ばれています。投手が特定の握り方と投げ方で投げるため、ボールの動きや変化において魅力的な特性を持っています。

投法の特徴

この球種の「パーム」という名前は、英語の「手のひら」を意味します。投げ方は、投手が指を伸ばし、手のひらでボールを支え、親指や小指、あるいは薬指も使って包み込むようにしながら押し出す形で行います。この方法は、手が柔らかい投手や指が短い投手に向いています。

パームボールの特性の一つは、他の球種と握り方が大きく異なるため、打者にとって判別がやや難しくなる点です。しかし、手首を捻る必要がないため、投球時の肩や肘への負担が少ないという利点もあります。

ボールの変化について

パームボールは、球速が遅く、回転が少ないのが特徴です。リリース直後からボールが縦に大きく落下し、打者には高めに投げられたように錯覚させることができます。さらに、このボールは無回転に近く、ナックルボールのように揺れるものや、横回転が加わってスライダーのように変化することもあります。

また、天候によっても球の変化度は影響を受けます。例えば、風や湿度が変わると、毎回異なる変化を見せることがあります。このため、パームボールは非常に多様な変化を持つ球種として注目されていますが、あくまで球速が遅いことから、打者にタイミングを合わせられると長打にされる危険性も高いです。

パームボールの歴史

この球種の考案者については複数の説がありますが、特定されているわけではありません。戦中戦後には、メジャーリーグベースボール（MLB）においてジム・コンスタンティーやサチェル・ペイジがパームボールを投げていたという記録があります。

日本プロ野球（NPB）においては、1948年に近藤貞雄が右手中指の神経を損傷した際に、その曲がった中指を利用してパームボールを再起させました。また、小山正明もアメリカの雑誌を参考にしてパームボールを習得し、300勝投手になる成功を収めました。彼はその後、石井丈裕にもパームボールを伝授しています。

現代のMLBではトレバー・ホフマンがこの球種を決め球として使っており、ロイ・ハラデイもキャリア初期に投げていました。日本のプロ野球では、浅尾拓也、帆足和幸、床田寛樹、渡辺翔太などがパームボールを投げる選手として知られています。特に帆足はサイドスローに近いスリー・クォーターから投げるため、彼のパームボールはスライダーと誤解されることもあり、「スライドパーム」と呼ばれることもあります。

パームボールは、そのユニークな投法と投球による変化のおかげで、野球における戦術の一端を担っています。

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