ヒウチダイ科

ヒウチダイ科（Trachichthyidae）

ヒウチダイ科は、キンメダイ目に属する魚類の一群であり、その中にはヒウチダイやハシキンメといった底生性の深海魚が含まれています。この科には全世界で約8属49種が確認されていますが、特に深海に生息している種が多く見られます。

分布・生態

ヒウチダイ科の魚たちは、太平洋、インド洋、大西洋を含む広範な海域に分布しています。彼らは主に水深100mから1500mの海底近くで生息する深海魚であり、日本近海においては、少なくとも3つの属が確認されています。中でも、ハシキンメ（Gephyroberyx japonicus）は食材として利用されることがあります。特に注目すべきなのはオレンジラフィー（Hoplostethus atlanticus）で、これは世界的に重要な食用魚として漁獲される対象となっています。

しかし、低水温の深海で生活するこれらの魚類は一般的に成長と繁殖が遅いため、過剰漁獲によって資源が枯渇するリスクが高まっています。1980年代初頭、ニュージーランド近海でのオレンジラフィーの漁獲が開始され、わずか6年で資源量が70%も減少し、遺伝的多様性の低下も懸念される事態となっています。

形態

ヒウチダイ科の魚は、左右に平たい体型を持っており、最大で約55cmに成長するものもいます。体高は高いものから中程度まで幅広く、頭部には多孔性の皮膚と広い感覚溝があり、独特のいかつい外観を持っています。特にハリダシエビス属の一部は生物発光を行うことが知られています。

この科の魚類の鱗には独特の形態が見られ、側線鱗は非常に大きく、体側の鱗の大きさや配置は種によって異なります。さらに、腹部には質感の異なる甲板状の大きな稜鱗が見られる種も存在します。背鰭や臀鰭、腹鰭の構造においても多様性があり、それぞれの種の特徴が観察されます。また、前鰓蓋骨には目立つトゲがあり、これもこの科の特徴の一つです。

分類

ヒウチダイ科はNelson（2016）の体系では8属49種が認識されていますが、FishBaseでは8属52種が確認されています。さらに白亜紀後期に絶滅した化石群として、南極大陸やイタリアからそれぞれAntarctiberyx属やLissoberyx属が出土していることも注目されます。

主な属と種

1. ハリダシエビス属（Aulotrachichthys）
- Aulotrachichthys argyrophanus
- Aulotrachichthys atlanticus
- Aulotrachichthys heptalepis
- など

2. ハシキンメ属（Gephyroberyx）
- Gephyroberyx darwinii
- Gephyroberyx japonicus

3. ヒウチダイ属（Hoplostethus）
- Hoplostethus abramovi
- Hoplostethus atlanticus
- Hoplostethus japonicus
- など

このように、ヒウチダイ科は多様な生態や形態を持つ興味深い魚類のグループであり、食用としても重要な役割を担っています。今後の研究によりその生態や保護施策についてさらに理解が深まることが期待されます。

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