ヒゲとボイン (アルバム)

UNICORN 『ヒゲとボイン』

『ヒゲとボイン』は、1991年9月30日にリリースされたUNICORNの7枚目のオリジナルアルバムです。前作『ハヴァナイスデー』から約9ヶ月ぶりとなる本作は、メンバー全員が作詞・作曲を手掛け、バンド自身がプロデュースを担当しました。アルバムタイトルは、漫画家・小島功の同名作品から取られています。

背景と制作

前作リリース後、UNICORNはミニアルバムのリリースや大規模なコンサートツアーを敢行。しかし、メンバーの堀内一史がアルバム制作のために用意した楽曲が採用されにくい状況が続き、ソロアルバム『MUSÉE』を制作することになります。このソロ活動と並行して『ヒゲとボイン』のレコーディングが行われました。

レコーディングは、サウンド・インやスタジオ・テイクワンなど、様々なスタジオで行われました。メンバーがサバイバルゲームに凝っていた時期と重なり、迷彩服を着てレコーディングに臨んだというエピソードも残っています。また、一部の楽曲は野外でレコーディングされ、焚き火の音や雨の音が収録されています。

しかし、ソロ活動との同時進行やメンバーそれぞれの音楽的主張が強まったことで、バンド内の共同作業の時間は減少。阿部義晴は、その状況に苦悩し、一時休養を取ることとなりました。

音楽性と楽曲

『ヒゲとボイン』には、ブラス・ロック、エスニック・ミュージック、ハードロック、フュージョンなど、様々なジャンルの楽曲が収録されています。歌詞の面でも、在日外国人、老齢化社会、同性愛者の失恋、家庭崩壊、都市開発など、ヘヴィーなテーマが扱われています。

アルバムはSIDE AとSIDE Bに分かれており、それぞれに個性的な楽曲が並んでいます。

SIDE A
「ターボ意味無し」：レニー・クラヴィッツからの影響を感じさせるヘヴィなロックナンバー。
「黒い炎」：ブラスセクションを大々的に導入した歌謡ロック。
「ニッポンへ行くの巻」：香港映画の音声を取り入れた、異国情緒あふれる楽曲。
「開店休業」：屋外で録音された、鳥の声や風の音が印象的なナンバー。
「幸福」：手島いさむがメインボーカルを務める、ドメスティックバイオレンスをテーマにした楽曲。
「看護婦ロック」：エルヴィス・プレスリーのパロディ。
SIDE B
「立秋」：唱歌風のメロディから始まり、フュージョン的な展開を見せる楽曲。
「ザ・マン・アイ・ラヴ」：ザ・フーやフェイセズのような、荒々しいドラムプレイが光るロックナンバー。
「フリージャズ」：弦・管楽器のみで構成された、短いながらも印象的な楽曲。
「風」：焚き火を囲みながらレコーディングされた、アコースティックな小品。
「家」：ビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」を彷彿とさせる展開を持つ楽曲。
「Oh,What a Beautiful Morning」：老人ホームの日常を題材にした、カントリー調の楽曲。
「風 II」：「風」の別テイク。
「車も電話もないけれど」：サビのメロディが美しい、ポップなナンバー。
* 「ヒゲとボイン」：7枚目のシングル。

リリースと評価

アルバムはオリコンチャートで最高位2位を獲得し、20万枚を超えるセールスを記録。日本レコード協会からゴールド認定を受けました。また、過去のUNICORN公式サイトでは、本作が最高傑作であると紹介されていました。

音楽評論家からは、アルバムの多様な音楽性や、メンバーそれぞれの個性が発揮された楽曲が高く評価されています。

『ヒゲとボイン』は、UNICORNの創造性と実験精神が結実した、バラエティ豊かな作品であり、彼らの代表作の一つとして、今も多くのファンに愛されています。

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