ヒズブル・ムジャーヒディーン

ヒズブル・ムジャーヒディーンは、1989年にカシミール地方で誕生した、イスラム主義を奉じる武装組織です。そのアラビア語での名称は「聖戦士の党」あるいは「ムジャーヒディーンの党」を意味しており、彼らの活動の根本的な動機を示唆しています。この組織の最大の目標は、インドの実効支配下にあるジャンムー・カシミール州を含むカシミール地方全体をパキスタンに統合することです。

この目的を追求するため、ヒズブル・ムジャーヒディーンは長年にわたり、インド政府およびその治安部隊に対する武装闘争を展開してきました。活動は、国境を越えてジャンムー・カシミール州へ浸透し、ゲリラ戦やその他の形式の攻撃を行うことを含みます。彼らの影響力はカシミール地方にとどまらず、インドやパキスタン国内、さらには欧州連合（EU）の一部地域でも活動が確認されているとされています。

ヒズブル・ムジャーヒディーンは、パキスタンで影響力を持つイスラム主義政党、ジャマーアテ・イスラーミー（JI）の軍事部門としての性格も併せ持っているという見方が一般的です。組織の最高指導者はサイイド・サラーフッディーン氏が務めており、彼の指揮の下、組織は活動を展開しています。指導部自体は、パキスタンが統治権を持つアーザード・ジャンムー・カシミール州に拠点を置いていると考えられています。

組織内部では、将来的な方向性を巡って意見の対立が生じています。特に、インド政府などとの和平交渉を進めるべきか否かという点で、賛成派と反対派の間で深い亀裂が入りました。この内部抗争の結果、和平的な解決を志向する一部のメンバーは組織を離脱し、別のイスラム主義組織であるヒズブ・エ・イスラミに合流する動きも見られました。

近年、最高指導者であるサイイド・サラーフッディーン氏の発言は、組織の強硬な姿勢を明確に示しています。2005年8月7日にパキスタンのイスラマバードで開かれたカシミール問題を巡る会合において、サラーフッディーン氏は、カシミール地方がインドからの完全な独立を達成するまで、武力による抵抗を継続することを宣言しました。さらに、2012年6月には、もしパキスタン政府がヒズブル・ムジャーヒディーンへの支援を打ち切るようなことがあれば、彼らの闘争の場をパキスタン国内に移すことになるだろうと述べ、これはパキスタン政府に対する強い警告と解釈されています。

インド当局は、サラーフッディーン氏をテロリストの指導者とみなしており、パキスタン政府に対して繰り返し彼の身柄引き渡しを求めています。しかし、この要求は現在まで実現していません。組織の幹部やメンバーの逮捕も続いており、2013年9月4日には、指揮官の一人であるターリブ・ラーリー氏が、ジャンムー・カシミール州のバンディポラでインド治安部隊によって逮捕される出来事がありました。

ヒズブル・ムジャーヒディーンの活動は、カシミール地方における長年にわたる紛争の一端を担っており、インドとパキスタンの関係において常に緊張の要因となっています。彼らの信奉するイスラム主義やジハードの理念は、地域の不安定化に拍車をかけていると見られ、その動向は国際社会からも引き続き注目されています。

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