ヒプノヴェナトル

ヒプノヴェナトルの紹介

ヒプノヴェナトル（Hypnovenator）は、日本の兵庫県丹波篠山市で発見された新しい恐竜の属で、前期白亜紀に生息していました。化石は2010年と2011年に採集され、2024年に新たに命名されたタイプ種、ヒプノヴェナトル・マツバラエトオオエオルム（Hypnovenator matsubaraetoheorum）として記載されました。属名の「ヒプノ」はギリシャ語の「眠り」を、「ヴェナトル」はラテン語で「狩人」を意味し、全体として「眠る狩人」を表しています。この名称は、ホロタイプ標本が休眠姿勢を取っていると考えられることに由来しています。

研究史

ヒプノヴェナトルの化石は、兵庫県篠山市内でアマチュア研究者によって発見されました。地元の篠山層群から約1億1,000万年前の地層に由来するこの岩塊は、2010年9月に採集されたもので、最初に発見された化石は指先まで関節した左前肢と大腿骨・恥骨・腓骨の関節した左後肢の一部を含んでいました。次に、2011年7月に別の岩塊が見つかり、その中には左下腿遠位部や中足骨の一部が保存されていました。

これらの化石が同一個体に由来すると考えられており、トロオドン科の一種だと言われています。発見された化石はMNHAH D1033340という標本番号で管理され、古生物学界での発表が行われました。2023年には、その研究進展が報告され、2つの化石が同じ個体に属することがさらに確認されました。

特徴

ヒプノヴェナトル・マツバラエトオオエオルムは、多くの特異な形態的特徴を有し、他の恐竜種と区別されています。特に特徴的なのは、第I指の基節骨の近位背側面に伸びる窪みや、第III指の指骨との関節を強固にするリップ形状です。また、大腿骨や尺骨の構造も独特であり、進化の過程における重要な情報を提供しています。

前肢の末節骨は、筋肉の付着が分析されており、力の伝達において非常に高い効率性が示されています。後肢では、アークトメタターサル構造を持っており、トロオドン科が早期にこの構造を持っていたことが示唆されています。この構造は掴む能力を示すものであり、ヒプノヴェナトルが何らかの形で捕食や生息環境に特化していた可能性を示します。

分類と古生態

Kubotaらの研究によれば、ヒプノヴェナトルはトロオドン亜科の基盤的な属に位置づけられるとされ、最古の属として知られています。篠山層群からは、他にも多くの化石が発見されており、これらの環境における生態系についての手がかりを提供しています。

篠山層群大山下層は、白亜紀前期の地質学的な背景にあり、多様な化石群が確認されています。化石発見の背景には、温帯夏雨気候やステップ気候の河川環境が影響していると考えられています。この地域からは、さまざまな恐竜の化石が発掘され、ヒプノヴェナトルの存在も古生物学的な重要性を増しています。

おわりに

ヒプノヴェナトルは、日本から見つかった12例目の非鳥類型恐竜として研究され、その進化や生活様式に関する重要な情報を提供しています。化石の詳細な分析や研究により、この恐竜がどのように生息していたのか、それが周囲の環境にどのように適応していたのかを知る手がかりとなることでしょう。

もう一度検索