トロオドン

トロオドン：知性と進化の謎に包まれた恐竜

トロオドン（Troodon）は、約7600万～6500万年前の白亜紀後期に、現在の北アメリカ大陸に生息していた肉食恐竜です。ただし、雑食または植物食であったという説も存在します。竜盤目獣脚亜目マニラプトル類トロオドン科に属し、その名前は「傷つける歯」を意味します。

疑問名とされたトロオドン

2017年、トロオドン属は疑問名とされました。しかし、トロオドン科には、トロオドンよりも原始的な形態を持つ種が存在し、その化石が中国で発見されています。この化石は、トロオドンよりもずっと古いジュラ紀後期（約1億6100万年～1億5100万年前）のものとされています。

ステゴケラスとの誤認

草食恐竜ステゴケラスの歯の形状がトロオドンに似ていたため、一時期は同じ恐竜とされていました。そのため、古い恐竜図鑑では、ステゴケラスが肥大した頭骨を持つ堅頭竜類の姿で描かれていたこともあります。

名称の変遷

学名は本来 Troödon とトレマを付けていましたが、現在では学名にトレマは使用できません。トレマは連続する2つの母音字を二重母音や長母音ではなく2つの母音として発音することを示す符号です。ウムラウトと字形は同じですが機能が異なるため、ö をウムラウトとしてトロエドンと読むのは間違いです。

1987年には、カナダの古生物学者フィリップ・J・カリーが、ステノニコサウルス（Stenonychosaurus）とトロオドンは同種であるとしました。しかし、2017年にラテニヴェナトリクスが新種と記載された際、トロオドンは疑問名となり、ステノニコサウルスが有効名として復活しました。

形態と生態

完全な骨格は発見されていませんが、近縁種などからの推定では、全長1.5～2メートル程度で、きゃしゃな骨格を持っていたと考えられています。身体の大きさに比して大きな脳頭蓋を持ち、脳容量は現生のエミューに匹敵するほどだったと推定されています。実際の知能については不明なものの、中生代で一番頭が良かった動物などと表現されることもあります。大きな目を持ち、正面を向いていたため立体視能力があったと推測されています。拇指対向性を示す3本指の前肢と、走行に適したきゃしゃなつくりの後肢を持っていました。後肢の第2趾は鉤爪になっており、マイアサウラの子供や卵を襲っていたと考えられています。また、眼窩の大きさから、夜でもよく見えていたと考えられています。抱卵をしていたこともわかっていますが、それはオスの役目だったと考えられています。

分類

トロオドンの分類体系は以下の通りです。

恐竜 Dinosauria
竜盤類 Saurischia
獣脚類 Theropoda
テタヌラ類 Tetanurae
コエルロサウルス類 Coelurosauria
マニラプトル形類 Maniraptoriformes
マニラプトル類 Maniraptora
エウマニラプトル類 Eumaniraptora
トロオドン類 Troodontidae

ディノサウロイド：トロオドンが進化した未来の姿？

1982年、カナダの古生物学者デイル・ラッセルは、トロオドンの脳容量比の大きさから、もし恐竜が絶滅していなければ、この恐竜が知的生物に進化したかもしれないと考え、「恐竜人間」ディノサウロイド（Dinosauroid）を創造し発表しました。

まとめ

トロオドンは、知性と進化の可能性を秘めた興味深い恐竜です。その生態や進化の過程には、まだ多くの謎が残されています。今後の研究によって、トロオドンの真の姿が明らかになることが期待されます。

参考文献

ヘーゼル・リチャードソン、ディビッド・ノーマン（監修）『恐竜博物図鑑』出田興生（訳）、新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年。ISBN 4-7875-8534-7

関連項目

ディノサウロイド
恐竜の一覧
* 絶滅動物の一覧

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