ヒマラヤスギ属

ヒマラヤスギ属 (Cedrus) について

ヒマラヤスギ属は、マツ科に分類される常緑針葉樹のグループです。モミ属と近縁であり、円錐形に近い樹形を持つものが多いですが、モミ属やトウヒ属のような整った円錐形ではなく、マツ属のようにやや崩れた印象を与えるものが多いのが特徴です。樹高は通常30〜40mですが、まれに60m近くに達することもあります。

形態

樹形

ヒマラヤスギ属の樹形は、クリスマスツリーのように円錐形になるものもありますが、多くはマツ属のようにやや荒れた印象を与えます。枝には長枝と短枝の2種類があり、葉は主に短枝に束状に生えます。長枝には基本的に葉はつきませんが、若い枝の先端には葉がつくことがあります。

葉

葉は短枝の先に束になって生えるのが原則です。長枝には通常生えませんが、枝先の若い部分には葉が見られます。この特徴はカラマツ属にも共通しています。

花・球果

球果はマツ科特有の鱗片が重なり合った構造をしており、モミ属の球果と似ていますが、より丸みを帯びています。球果は熟すと樹上で分解し、翼のある種子を散布します。

生態

ヒマラヤスギ属の樹木も他のマツ科植物と同様に、根と菌類が共生する菌根を形成します。菌根を形成することで、樹木は土壌中の栄養分の吸収を助けられ、菌類は樹木から光合成産物を得ることができます。この共生関係は、樹木と菌類双方にとって有益です。また、菌根を通して、同種または他種の植物とネットワークを形成していると考えられています。共生する菌類の中には、キノコとして認識できるほど大きく成長するものがあり、食用可能なものも存在します。

人間とのかかわり

ヒマラヤスギ属の樹木は、温帯地域で観賞用として人気があり、公園や庭園などでよく見られます。その耐久性の高さから、古代には建築材料としても利用されており、旧約聖書に登場するソロモン神殿の建設にも使われたとされています。また、屋根材としても防寒のために利用されてきました。さらに、ヒマラヤスギから抽出される精油は、天然の防虫剤として利用されています。結婚の際に持参するホープチェストも、ヒマラヤスギから作られることが多いです。トルコなどの地中海地域では、ヒマラヤスギの植林が盛んに行われています。

下位分類

ヒマラヤスギ属は以下の4種に分類されます。

アトラススギ (Cedrus atlantica): 北アフリカのアトラス山脈に分布しています。
*キプロススギ (C. brevifolia): キプロス島にのみ自生する固有種です。
*ヒマラヤスギ (C. deodara): ヒマラヤ山脈西部に分布する最大種で、樹高は60mに達することもあります。
*レバノンスギ (C. libani): トルコからレバノン、モロッコにかけての地中海沿岸地域に分布し、葉の色が特徴的です。

語源

属名 Cedrus は、ラテン語の cedrus に由来し、これはさらにギリシャ語の kedros に遡ります。古代ギリシャでは、kedros はヒマラヤスギ属だけでなく、ビャクシン属の植物も指していました。この言葉は中東ではなくギリシャで生まれたとされており、後に香りの強いヒマラヤスギ属にも使われるようになったと考えられています。英語の cedar* は、ヒノキ科やセンダン科など、香りの強い他の樹木の名前にも使われています。

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