ヒノキ科

ヒノキ科 (Cupressaceae)

ヒノキ科は、針葉樹の中でも特に多様なグループであり、マツ科に次いで多くの種を含みます。その分布は北半球から南半球にわたり、特に温帯地域でよく見られます。この科の植物は、形態、生態、人間との関わりにおいて、興味深い特徴を多く持っています。

形態

ヒノキ科の樹木は、一般的に円錐形の樹形を持つものが多いですが、南半球に分布する種の中には、丸みを帯びた広葉樹のような形になるものもあります。樹皮は、橙色から赤褐色で、縦に筋が入って剥がれるものが多いですが、滑らかなものや鱗状になるものも存在します。

葉は、らせん状または対生に配置され、放射状に出ます。幼樹では針状の葉を持つものが多いですが、成長すると鱗状になる種が多いです。しかし、針状のままの種も存在します。葉が個別に脱落するのではなく、小枝ごと脱落するのが特徴で、マツ科などとは異なります。ほとんどの種は常緑ですが、スギ亜科には落葉性のものもあります。また、常緑樹であっても、冬に葉の色が変わるものもあります。子葉は通常2つですが、6つ持つ種もいます。

球果は木質または革質で、ビャクシン属では液果状になります。鱗片には1つから数個の胚珠が付き、鱗片は葉と同様にらせん状または対生に配置されます。種子は一般的に両側に翼を持ちますが、一部には片側だけ、または翼を持たないものもあります。

生態

ヒノキ科の植物は、乾燥地から水辺まで、様々な環境に生息しています。火災が頻繁に起こる地域に生育する種では、晩生球果という特殊な仕組みを持ちます。これは、成熟しても球果が開かず、火災の熱によって初めて開くというもので、火災への適応と考えられています。この仕組みは、マツ科の一部の種にも見られます。

また、ヒノキ科の植物は、異種寄生性のサビキンの宿主になることがあります。特にビャクシン属に寄生するサビキンは、バラ科の果樹に赤星病を引き起こすことで知られています。ヒノキ科の樹木は、菌類と共生して菌根を形成しますが、マツ科やブナ科が外生菌根を作るのに対し、ヒノキ科はアーバスキュラー[[菌根]]を作ります。この菌根は多くの植物と共生しますが、目に見えるキノコはあまり作りません。

人間との関わり

ヒノキ科の樹木は、成長すると良質な木材となるものが多く、建築材料として重要です。木材中の壁孔の形態はマツ科のものとは異なり、シュウ酸カルシウムの結晶は通常見られません。また、ビャクシン属の実は、針葉樹としては珍しく食用とされます。

分類

ヒノキ科は、いくつかの亜科に分類されます。

コウヨウザン亜科（Cunninghamioideae）

コウヨウザン属（Cunninghamia）: 中国南部に分布する2種を含む。

タイワンスギ亜科（Taiwanioideae）

タイワンスギ属（Taiwania）: タイワンスギ（Taiwania cryptomerioide）のみを含む。

タスマニアスギ亜科（Athrotaxidoideae）

タスマニアスギ属（Athrotaxis）: タスマニアに分布する2-3種を含む。

セコイア亜科（Sequoioideae）

セコイア属（Sequoia）: アメリカ西海岸に分布するセコイア（Sequoia sempervirens）のみを含む。
セコイアデンドロン属（Sequoiadendron）: アメリカ西部に分布するセコイアデンドロン（Sequoiadendron giganteum）のみを含む。
メタセコイア属（Metasequoia）: メタセコイア（Metasequoia glyptostroboides）のみを含む。

スギ亜科（Taxodioideae）

ヌマスギ属（Taxodium）: アメリカからメキシコにかけて3種が知られる。
スイショウ属（Glyptostrobus）: 中国にスイショウ（Glyptostrobus pensilis）のみを含む。
スギ属（Cryptomeria）: 日本にスギ（Cryptomeria japonica）のみを含む。

カリトリス亜科（Callitroideae）

Callitris: オーストラリアなどに10種程度が分布。
Actinostrobus: オーストラリア西部に3種が分布。
Widdringtonia: アフリカ南東部に4種が分布。
Diselma: タスマニアにDiselma archeriのみが分布。
パタゴニアヒバ属（Fitzroya）: 南米にパタゴニアヒバ（Fitzroya cupressoides）のみが分布。
Austrocedrus: 南米チリにAustrocedrus chilensisのみが分布。
Libocedrus: ニュージーランドやニューカレドニアに5種程度が分布。
Pilgerodendron: 南米にPilgerodendron uviferumのみが分布。
Papuacedrus: ニューギニアにPapuacedrus papuanaのみが分布。

ヒノキ亜科（Cupressoideae）

クロベ属（Thuja）: 東アジアとアメリカに5種ほど分布。
アスナロ属（Thujopsis）: 日本にアスナロ（Thujopsis dolabrata）のみが分布。
ヒノキ属（Chamaecyparis）: アジアとアメリカに合計6種ほどが分布。
フッケンヒバ属（Fokienia）: 中国南部から東南アジアにフッケンヒバ（Fokienia hodginsii）のみが分布。
Calocedrus: アジアに3種、アメリカに1種が分布。
Tetraclinis: アフリカ大陸北部にTetraclinis articulataのみが分布。
Microbiota: ロシア極東にMicrobiota decussataのみが分布。
コノテガシワ属（Platycladus）: コノテガシワ（Platycladus orientalis）のみが分布。
Xanthocyparis: ベトナムにXanthocyparis vietnamensisのみが分布。
イトスギ属（Cupressus）: 東アジアからヒマラヤ、アメリカに25種程度が分布。
* ビャクシン属（Juniperus）: 北半球の広い範囲に分布。

ヒノキ科の植物は、その多様な形態や生態、人間との関わり方において、非常に興味深いグループです。これらの情報は、ヒノキ科の理解を深める上で役立つでしょう。

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