ヒメアカタテハ

ヒメアカタテハ（姫赤立羽）

ヒメアカタテハは、チョウ目タテハチョウ科に分類されるチョウの一種で、学名は Vanessa cardui です。アカタテハによく似た外見を持ちますが、いくつかの特徴で見分けることができます。世界中の広範囲に分布しており、非常に移動能力が高いことで知られています。

特徴

成虫の前翅長は約3cmで、アカタテハとよく似ています。しかし、いくつかの点で区別が可能です。前翅の先端は黒色で白い斑点があり、中央部は橙色で黒い斑点があります。後翅の表面はアカタテハが褐色なのに対し、ヒメアカタテハは橙色で、黒い斑点が3列に点線状に並んでいるのが特徴です。また、飛翔中の個体を観察すると、アカタテハは黒褐色が目立つのに対し、ヒメアカタテハは橙色が際立って見えます。触角の先端が白いのは、タテハチョウ科に共通する特徴です。

分布と生息環境

ヒメアカタテハは、南極大陸を除く全ての大陸に分布しており、現在最も広い分布を持つチョウの一つとされています。ただし、オーストラリアでは西部の一部地域にのみ生息しています。移動性が非常に高く、越冬が難しい寒冷地でも、夏から秋にかけて移動し、発生を繰り返します。日本では、秋になると個体数が多くなる傾向があります。

成虫は日当たりの良い草原を好み、田畑の周辺などでよく見られます。不規則な軌道を描きながら速く飛び、様々な花を訪れます。また、オスは縄張りを作る習性があり、田畑のあぜ道や林道などの一定区間を往復する姿が観察できます。アカタテハが花以外に樹液や獣糞、腐果に集まるのに対し、ヒメアカタテハは花にしか集まらないという違いがあります。

食草と越冬

幼虫はキク科のハハコグサ、ヨモギ、ゴボウなどを食草とします。本州では成虫で越冬するという説もありますが、千葉県での実験では成虫が越冬能力を持たないという結果も出ています。近年、ナガサキアゲハやクロコノマチョウと同様に、温暖化の影響で分布を北へ広げている種のひとつであり、温暖な地域では越冬形態が一定していないと考えられています。

かつてアカタテハと同じく成虫越冬とされていた頃には、春に見られる成虫の翅が劣化していないことに疑問を持った研究者が、冬に食草を探した結果、幼虫を発見し、幼虫越冬であることが判明したという経緯もあります。

参考文献

猪又敏男(編・解説)、松本克臣(写真)『蝶』山と溪谷社〈新装版山溪フィールドブックス〉、2006年6月。ISBN 4-635-06062-4。

関連項目

アカタテハに関する別の記事へのリンク、または説明'>アカタテハ

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